富士経済は、2030年までのパワー半導体市場を予測した。SiC(炭化ケイ素)/GaN(窒化ガリウム)パワー半導体は、情報通信機器分野を中心に引き続き需要が拡大する。これに加え今後は、エネルギー分野や自動車・電装システム分野での伸びが期待される。
富士経済は2018年3月9日、次世代パワー半導体の世界市場を調査し、2030年までの市場予測を発表した。消費電力の低減などに向けて、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた次世代パワー半導体の需要が本格化する。
調査結果によると、2017年のパワー半導体市場規模は、中国での需要増加などにより全体で2兆7192億円となった。2030年には4兆6798億円になると予測した。SiC/GaNパワー半導体を中心に、自動運転や電動化に弾みがつく自動車・電装システムなどで本格採用が進む可能性が高い。
現行のパワー半導体は、Si(シリコン)ベースの製品が主体で、2017年は全体の約99%を占める。日本や欧米の半導体メーカーに加え、中国や台湾メーカーも競争力のある製品を投入しており、市場は引き続き拡大する。
一方で、SiCやGaNを用いたパワー半導体の需要がこれから本格化する。さらに、Ga2O3(酸化ガリウム)系パワー半導体の実用化も進んでいる。このため、2030年にはこれら次世代材料を用いたパワー半導体の比率が、全体市場の10%を占める見通しとなった。
次世代パワー半導体として注目されるSiCパワー半導体の市場規模は、2017年に275億円となった。情報通信機器分野やエネルギー分野が需要をけん引する。このうち、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)が225億円で、SiC-FET(電界効果トランジスター)は50億円である。2030年はSiCパワー半導体市場として2270億円と予測した。
GaNパワー半導体の世界市場は、200V帯の低耐圧と600V帯以上の中耐圧領域で着実に市場が拡大する。2017年は18億円の市場規模となった。今後も情報通信機器分野を中心に、エネルギー分野や工作機械、医療機器、電装システムなどに用途が広がる。2030年には1300億円の市場規模に拡大すると予測した。
Ga2O3系パワー半導体は、2018年後半からSBDの量産が始まる予定である。当面は民生機器や情報通信機器用の電源用途に採用される見通しだ。その後は電装システムなどへの搭載が期待されており、2030年の市場規模は1450億円と予測した。
同時に、パワー半導体に関連する構成部材や製造装置の世界市場も調査した。構成部材の世界市場(生産ベース)は、2017年の1860億円に対して、2030年は4249億円と予測。製造装置の世界市場は、2017年の1761億円に対して、2030年は3953億円となる見通しだ。
富士経済は、2017年11月〜2018年1月に、専門調査員による関連企業や団体へのヒアリング、文献調査などを行い、報告書「2018年版次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」をまとめた。調査では、次々世代までのパワー半導体15品目に加えて、パワー半導体構成部材16品目、パワー半導体製造装置20品目、パワーエレクトロニクス機器30品目の市場について現状分析を行い、将来市場を予測した。
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