今回は、Infineon Technologiesが開発した埋め込みフラッシュメモリ技術「HS3P(Hot Source Triple Poly)」を取り上げる。HS3Pによるメモリセルトランジスタの動作原理や、どういった分野で実用化されているかを解説する。
国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、マイコン(マイクロコントローラー)の大手ベンダーであるルネサス エレクトロニクスの埋め込みフラッシュメモリ技術をご紹介した。今回は、同じくマイコン大手ベンダーであるInfineon Technologiesの埋め込みフラッシュメモリ技術をご報告する。
Infineon Technologies(以下はInfineonと表記)が開発した埋め込みフラッシュメモリ技術を同社は、「HS3P(Hot Source Triple Poly)」と呼んでいる。HS3P技術の特徴は2つ。1つは、スプリットゲート方式であること。もう1つは浮遊ゲート方式であることだ。コンセプトそのものは、SST(Silicon Storage Technology)の「SuperFlash」(関連記事:埋め込みフラッシュIP大手ベンダーSSTのメモリ技術)と似ている。
HS3P技術によるメモリセルトランジスタの動作は、以下のようになる。プログラム(書き込み)では、メモリゲートにプラスの高電圧を印加し、選択ゲートとビット線にプラスの低い電圧を印加する。すると「SSI(Source Side Injection)」により、ホットエレクトロンが浮遊ゲートに注入される。
イレーズ(消去)では、メモリゲートにマイナスの高電圧を印加し、基板とソースにプラスの高電圧を印加する。すると「ファウラーノルドハイムトンネリング(FNトンネリング)」によって浮遊ゲートの電荷(電子)が基板に飛び込む。
HS3P技術の登場はかなり最近である。2013年に65nm世代で実用化が始まった。生産はシリコンファウンダリーが担当している。40nm世代のHS3Pも開発済みである。
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