今回は、本シリーズで、これまで述べてきた車載用埋め込みフラッシュメモリ技術を総括する。
国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、マイコン(マイクロコントローラ)の大手ベンダーであるInfineon Technologiesの埋め込みフラッシュメモリ技術をご紹介した。今回は、これまで述べてきた車載用埋め込みフラッシュメモリ技術を総括していこう。
これまで見てきたように、車載用埋め込みフラッシュメモリを実現する技術は1つではない。車載用といってもパワートレインやボディ、シャシー、インストルメント、エンターテインメントなど、さまざまな用途があり、それぞれに要求仕様が違う。すべての用途を、1つだけの技術で満たすことは難しい。
現在はシリコンファウンドリーがSoC(System on a Chip)に向けて埋め込みフラッシュメモリのマクロを提供している。メモリセルの大きさ(シリコン面積)と製造工程のペナルティ(追加工程)はしばしば、トレードオフの関係にある。SoC開発では埋め込みメモリのマクロは慎重に選ぶことが望ましい。SoCのシリコンダイ面積に占める不揮発性メモリの割合は、20〜35%以下にとどめて置きたい。
車載用マイコンの開発期間は短くない。5〜7年の歳月を要するとされる。マイコンベンダーは「ティアー2(Tier 2)」と呼ばれる、自動車メーカーから見ると2段階ほど下の階層に位置する。マイコンベンダーと自動車メーカーの間にある「ティアー1(Tier 1)」とは、自動車用電装品メーカーを指す。例えば、マイコンを組み込んだエンジン制御ユニットを開発して自動車メーカーに納入するのが、ティアー1企業の仕事だ。
ティアー1企業で使用技術を固めるところから、マイコンの新規採用に向けた開発プロジェクトは始まる。ティアー1企業でプロトタイプを試作し、バグを見つける。バグを取り除いたマイコン搭載制御ユニットでストレス試験や信頼性試験などをティアー1企業と自動車メーカーで実施し、合格すると採用が最終的に決まる。マイコンが量産に入るのは、その後である。
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