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日系企業は「Lの世界」こそ重要視すべき大山聡の業界スコープ(4)(3/3 ページ)

» 2018年04月18日 09時30分 公開
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L型の消費を活性化するには

 次に「L型消費」についてだ。その地域で享受できる3次産業が代表例だろう。販売、流通、交通、情報通信、金融、飲食サービス、教育、医療などがあるが、これらのサービス業は都心部に集中しやすく、地方部との格差が広がる要因になっているのが現状である。

 しかし、AI(人工知能)やIoTを活用することで、遠隔医療が充実化したり、自動運転による無人タクシーが登場したり、サービスを提供する人間がその場にいなくても十分な利便性を提供できるようになれば、特定地域のL型消費の活性化につながる。言い換えれば、AIやIoT技術を地方部に活用することが大きなビジネスチャンスであり、都心部での活用よりも高い伸びしろが期待できることになる。サービスの向上を望んでいる地方部は山ほどあるからだ。

 特定の国や地域の経済活動を活性化するためには、その地域における生産または消費を活性化させるL型産業を育成することが不可欠で、それにはAIやIoTといった技術を駆使することが有効である。日系企業の多くは「グローバル化の必要性」を念仏のように唱えているが、G型産業にばかりこだわらずに、L型産業に注力することがむしろ必要なのではないだろうか。

 G型産業は、規模の拡大やコスト削減を重要視する傾向が強く、どちらかと言えば日系企業の多くはこれらを不得手としている。これに対してL型産業の多くは、きめの細かさやサービスの品質などが重要視されやすく、日系企業にとっても取り組みやすい要素がたくさんあるはずだ、というのが筆者の持論でもある。

 どの地域にどのようなサービスが有効か、そしてそれらのニーズを積み上げていけば、結果的に事業規模を拡大することも可能だろう。日系各社には、是非ともL型産業の育成にもっと目を向けていただきたいものである。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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