香港で開催された「International ICT Expo」(2018年4月13〜16日)では、スマートシティー関連の技術や製品を展示する専用ゾーンが設けられた。特に、通信機能やカメラ、センサーを搭載するスマート街灯(スマートポール)の展示が目立った。
香港では、「Hong Kong Smart City Blueprint」というスマートシティー構想を進めている。再生可能エネルギーの普及など、エネルギーや環境に特化した「Smart Environment」、交通や輸送をスマート化する「Smart Mobility」、フィンテックやスマート観光などを普及促進させる「Smart Economy」、電子決済の普及を図るなどの「Smart Living」といった要素から構成されている。
香港で開催された、アジア最大規模のコンシューマーエレクトロニクスの見本市「International ICT Expo」(2018年4月13〜16日、香港コンベンション&エキシビジョンセンター)では、「Smart City Zone」が設けられ、「Hong Kong Smart City Blueprint」に関する取り組みなどを中心に、スマートシティー向けの製品や技術が展示された。
会期中の4月14日に開催されたセミナー「Panel on Hong Kong's Smart Mobility and Logistics」では、Automotive Parts and Accessory System(APAS) R&D CenterのSenior R&D Managerを務めるHoe Seng Ooi氏が登壇し、「香港では、大気汚染の約9割が自動車の排気によるものだといわれている」と述べ、スマートモビリティは、香港にとって意義のあることだと強調した。Hong Kong Smart City Blueprintを進める香港Innovation and Technology Bureauのデータによると、香港では、1日当たり1260万人以上が電車や地下鉄で移動し、道路1km当たり354台の自動車が走行しているという。
Ooi氏は、APAS R&D Centerの2017年における開発実績として、長さ12mのプラグインハイブリッドバスや、電動の16トントラック、駐車場の天井に取り付ける電気自動車用急速充電システムなどを挙げた。プラグインハイブリッドバスは、香港で設計および組み立てが行われたもの。従来のディーゼルバスに比べて、燃料使用量が40%減、ガス排出量が70%減になるという。16トン電動トラックは、ごみやリサイクル品の収集向けとして開発された。1回の充電で約250km走行するという。駐車場の天井に設置する急速充電システムは、「土地が狭く、いかにスペースを有効活用するかが重要な香港に最適なシステムではないか」と、Ooi氏は述べる。
Hong Kong R&D Center for Logistics and Supply Chain Management Enabling Technologies(以下、Hong Kong R&D Center)でアシスタントディレクターを務めるWai Chi Ho Stephen氏は、「今後は、物流(ロジスティクス)の分野でも全てのモノがつながっていくだろう」と述べ、「インダストリー4.0ならぬ“ロジスティクス4.0”の時代が到来しつつある」と語った。
Stephen氏は、Hong Kong R&D Centerが、スマートロジスティクスの分野で取り組んでいる開発プロジェクトを幾つか紹介した。例えば、倉庫などで、複数のカートが先頭を歩く人間(先導者)の後についていくシステムを実証実験中だという。カートは、先導者が着ている作業着の背中に貼られたQRコードを読み取り、それを基に先導者の後についていくという。また、UWB(超広帯域周波数)を使い、パッケージを開封することなく中身をスキャンして検査するシステムも開発中だ。Stephen氏は、「物流分野に限らず、スマート化、インテリジェンス化というのは、機械や技術によって生まれるものではなく、それらを利用する側によって生まれる」と強調し、既存技術や最先端技術をいかに利用してスマート社会を構築できるのかを考えなくてはならないと述べた。
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