中国のAlibaba Groupが、中国の組み込み向け32ビットCPUコアの設計を手掛ける中国C-Sky Microsystemsを買収した。中国における、半導体“自給自足”の動きが加速するのだろうか。
中国の巨大インターネット企業のAlibaba Groupは2018年4月20日(現地時間)、32ビット組み込みCPUプロセシングコアの設計を手掛ける、中国C-Sky Microsystems(以下、C-Sky)を買収したことを発表した。
Alibabaは買収条件を明らかにしていない。
この動きによって、Google、Amazon、Alibabaといった企業の間で、ある傾向が強まっていることが浮き彫りになった。それは、自社のビジネスに見合うチップを設計するため、半導体企業を傘下に取り込もうとしているという傾向だ。
この買収が発表されるかなり前から、C-SkyはAlibabaとの独自のつながりを享受していた。当時、C-SkyのCEO(最高経営責任者)であるXiaoning Qi氏は、C-Skyは半導体企業として世界で初めてAlibabaから多額の資金を得た企業であると説明していた。C-Skyは2001年に中国・浙江省の杭州で設立された。
Qi氏は、AlibabaのJack Ma氏から提供された資金額を明らかにすることを避けた。一方で、自身のメンター的存在である、C-Skyの設立者兼チェアマンのXiaolang Yan教授とともに、ハードウェア技術がeコマース大手のAlibabaの未来にとって不可欠であることを認めるよう、Alibabaに対して働き掛けてきたことを明らかにしている。
Reuters(ロイター通信)は、AlibabaによるC-Sky買収の背景には、米国政府が中国の大手スマートフォンメーカーZTEに対してチップなど部品の供給を7年間禁止する措置をとったことがあるのではないかと報じている。この禁止措置が発表された結果、中国は産業団体、規制当局、中国の大手ファンドを連携させて、中国のIC産業を自給自足できるようにする計画を加速しようとしているのではないかと推測されている。
その可能性もあるが、AlibabaとC-Skyの取引は、ZTEに対する禁止措置とは関係なく進行していたことも考えられる。
EE Timesは、C-SkyのCEOにコンタクトを取り、Alibabaによる買収についてさらに明らかにするよう求めたが、インタビューは拒否された。Alibabaは、取引が完了するまでインタビューに応じないようCEOに勧告しているようだ。
C-Skyは32ビットの高性能、低消費電力の組み込みCPUを設計し、チップアーキテクチャのライセンスを供与するというビジネスを展開してきた。同社初のCPUコア「CK510」を発表した2003年以降、C-Skyは組み込みコア、SoC(System on Chip)プラットフォーム、ソフトウェアツール、ミドルウェアなどを地道に開発してきた。2017年、Qi氏はEE Timesに対し、同社がその時点で70社の中国企業にライセンスを供与していることを明らかにしていた。
言うまでもないが、欧米の半導体市場の観測筋の中には、「組み込みの世界市場は、既にArmコアなど一部のコアの牙城になっているのか」「RISC-V登場によって何が変わるのか」といった明白な疑問がある。
当時、Qi氏はEE Timesに対し「中国はコア技術の開発に取り組む必要がある。われわれは、当社の組み込みCPUがコア技術の1つだと考えている」と述べていた。Qi氏はRISC-Vについて、「前途有望な命令セットアーキテクチャだと語り、2017年にEE Timesが取材した際、C-Skyの64ビット対応コアを、RISC-Vベースにすることを検討していると述べていた。ちなみにC-Skyは、RISC-V Foundationのプラチナメンバーでもある。
Qi氏は、「われわれの組み込みCPUコアは、スマートフォンのベースバンドプロセッサやアプリケーションプロセッサ向けではない。当社は、それらの市場は狙わない」と強調する。C-Skyがターゲットにするのは、組み込みやIoT(モノのインターネット)機器である。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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