TSMCは2019年初めには、EUVを導入した量産を開始したい考えだ。2018年4月には、2〜3週間をかけて、250Wの光源による生産を持続するためのシステムを導入している。2019年には、量産に必要とされる300Wの達成を目指すという。
TSMCの技術開発部門で研究開発担当バイスプレジデントを務めるY.J. Mii氏は、「当社では今のところ、通常の電力レベルが145Wであるため、まだ実現への道のりは遠いといえる。しかし、スループットに関しては、生産に必要なレベルを達成できる見込みだ」と述べる。
また同氏は、「EUVは今後も、液浸ステッパーより優れたクリティカルディメンション均一性(CDU:Critical Dimension Uniformity)を実現することができるだろう」と述べ、いくつかの例を挙げた。TSMCは、N7+とN5の両方の複数層でEUVを適用する予定だとして、ASMLの「NXE3400」システムの導入を積極的に進めているという。
Samsung Electronicsは以前に、EUVによる生産を2018年に開始する予定だと発表していた。そのため、TSMCのEUV計画は、Samsungの生産開始予定から6カ月以内に始動することになる。Samsungは2018年5月後半に、イベントを開催する予定であることから、そのイベントでプロセス技術の進捗(しんちょく)について最新情報を明らかにするとみられる。
TSMCの5nmプロセス技術に関しては、EDAフローのバージョン0.5のリリースが2018年6月に、デザインキットのバージョン0.5のリリースが同年7月に、それぞれ予定されていることから、まだほんの初期段階にすぎない。PCIe Gen 4やDDR4、USB 3.1など、多くのIPブロックが実証されるのは、2019年以降になるとみられる。
TSMCは2019年末までに、10nmおよび7nmプロセス技術による生産量を3倍に拡大し、1年間当たり110万枚のウエハー生産量を達成したい考えだという。同社は現在、台湾で最も新しい工場となる「Fab 18」の建設を進めており、2020年には5nmプロセスによる製造を開始する予定だとしている。
TSMCは、GPUをはじめとするプロセッサ向けの2.5次元(2.5D)のパッケージング技術「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」や、スマートフォンチップ向けのウエハーレベルのファンアウトパッケージング技術(FOWLP:Fan Out Wafer Level Packaging)「InFO」を採用した製品の拡充も進めている。
CoWoSチップは2019年初めごろに、シリコンインターポーザを選べるオプションが用意される見込みだ。さらに、2018年中には、バンプピッチが130μmのバージョンを実用化できる予定だという。
InFOの種類は現在、4種類ある。メモリ基板向けの「Info-MS」はSoC(System on Chip)とHBMを集積していて、2018年9月に実用化されるとみられている。「InFO-oS」は、DRAMに最適なバックサイドRDLピッチを搭載し、既に利用可能だという。マルチスタックオプション「MUST」は、1つまたは2つのチップを、インターポーザによって別の大型チップ上に集積する技術だ。「InFO-AIP(Antenna-in-Package)」では、フォームファクタが10%小型化し、ゲインが40%向上するという。5G対応ベースバンド向けフロントエンドモジュールなどをターゲットにしている。
パッケージング技術を専門とするTechSearch Internationalのプレジデントを務め、パッケージング分野のベテランアナリストであるJan Vardaman氏は、「InFOは、非常に重要なプラットフォームだ」と主張する。
「メモリをPoP(Package on Package)で集積した、ベースバンドチップやモデムチップ向けのInFOは、薄型化と小型化、高性能化を実現する優れた技術だ。『InFO on Substrate』についても、2μmのライン/スペースでさまざまなアプリケーションへの対応が可能になるため、今後普及が進んでいくだろう」(同氏)
TSMCは、これだけにとどまらず、新しいパッケージング技術を2種類発表している。
「Wafer-on-Wafer(WoW)」は、最大3つのダイを直接、接続することが可能だ。2018年4月30日の週に発表されたばかりの技術だが、ユーザーは、使用するEDAフローが、この接続技術に対応しているかどうかを確認する必要があるという。2018年6月には、EMIサポートを取得するとみられる。
2019年中にリリース予定の「SoICs(System-on-Integrated-Chips)」と呼ぶ技術の概要についても発表している。10μm未満のインターコネクトを使用して2つのダイを接続するとされるが、技術的な詳細については、まだ不明な点が多い。モバイルからHPCまでさまざまな用途に狙いを定め、異なるプロセス技術で製造されたダイを接続することが可能なため、SiP(System-in-Package)の一種ではないかとみられている。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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