開発した2009年当時は、“帯に短し、たすきに長し”の仕様と判断され、お蔵入りになったのかもしれない。あるいは当時はシリコンの種類を増やすと、費用対効果が崩れ、種類を増やさない方向(設計まで完了もしくは量産前)で保留された可能性も考えられる。いずれにしても連番のコードをを持つシリコンが存在していたのだ。
当時は、2つの製品を抜いても、価値が創出できた。しかし低消費電力と、小面積のFPGAが求められてきた中で、開発当時に販売されなかったチップが、日の目を見ることになったものだと考えられる。
前回も書いたが、改めて各社のお蔵入りチップの中には、日の目を見なかったけれど、月日がたって価値が生まれたチップがあるだろう。ぜひ、蔵の中を見てみたいものである。
思い起こせば、Cyclone 10 LPが開発された前後の2008〜2010年はまだスマホは登場直後でブレイクしていなかった。現在のトレンドとなっている人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といったワードもほとんど流通していなかった。そして2008年に発生したリーマンショックの影響で、どの半導体メーカーも事業姿勢が慎重になっていた頃であり、開発済みのチップでさえも仕分けの対象となり、お蔵入りなどが起こった時期でもあった。
8年ほどの歳月を経て日の目を見たCyclone 10 LPは、現在の市場が求める優れた仕様のチップである。まさにIoT時代の機器を最適化でき、帯に短し、たすきに長しをカバーできるチップだと思う(リーク電力の小ささやコスト競争力は十分な価値!!)。こうした優れたチップを蔵出しし、再利用を図れることは、新たに費用をかけずに市場を形成できる「評価すべきこと」だと捉えている。
図1は、Intel(Altera)と双璧を成すFPGAメーカーであるXilinx製FPGAのチップの一例である。
テカナリエではXilinxのFPGAも開封、観察しているが、2010年以降のXilinxのチップには西暦情報が搭載されておらず、Intelのような「蔵出し事例」は確認できていない。いずれにせよ、今後もFPGAをジャンジャン観察し、さまざまな事象を探っていく。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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