「われわれは、サプライヤーと顧客(エンドユーザー)、テクノロジーをつなげる役割を担っている」とFu氏は述べる。とりわけIoTでは、サービスの実用化を目指すスタートアップ企業が多い。上記で紹介したSmartDrive Carsも、スマートドライブという新興企業が開発したものだ。こうしたスタートアップ企業は、サービスの構想はあっても、ハードウェアやソフトウェアについての知識が必ずしも十分ではないこともある。そうした場合に、多数のサプライヤーから成るエコシステムを大いに活用してサポートするのが、Avnetの役割だとFu氏は強調した。
Avnetは、IoT分野に向けて自社のエコシステムを強化すべく、M&Aを積極的に行ってきた。2016年には、デジタルプラットフォームを利用した電子部品販売に強みを持つ英国Premier Farnell(プレミア ファーネル)を買収。これにより、IoT分野での顧客獲得に向け、デジタルマーケティング機能を強化するという。同年、インターネットに接続できるハードウェアを設計、プログラミングする方法を学ぶオンラインコミュニティーサイトを運営する米Hacksterも買収。2017年には、設計から量産まで、米Dragon Innovationを買収した。Dragon Innovationは、特にスタートアップ企業の試作から量産までのプロセスのサポートに力を入れていることが特徴だ。Dragon Innovationを買収することで、スタートアップから中小企業、大企業まで、IoT開発について支援できる体制が整ったとFu氏は説明する。
Fu氏は、Avnetの利点として、IoTエコシステムの中心にいるので、顧客が抱えている課題や、IoT機器やIoTサービスについての要件などの情報が集まりやすいことを挙げる。「Avnetは、コンサルティングからデータ解析のところまでエンド・ツー・エンドで対応することで、それらの課題解決や要件を満たすことができる。それが強みなのではないか」(Fu氏)
日本においても、サプライヤーと顧客をつなぐという役割は変わらない。アブネット・ジャパンの社長を務める茂木康元氏は、「システムインテグレーターやVAR(バリューアッドリセイラー)といったパートナー各社の力を借りながら、これまでわれわれが接触を持ったことがなかったIoT関連の企業に向けて、アプローチを進めている」と述べる。茂木氏は、「扱う商材についても、これまでと同様に半導体はもちろん、組み込みオートメーションコンピュータ、組み込みボード、組み込みソフトウェア、ゲートウェイやLANスイッチといったIoT向けの商材を、ここ3年の間に大幅に増やした」と続ける。特にIoTについては、製品を提供するというよりも、「ソリューションを提供する」という戦略になってきていると、茂木氏は語る。
東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年に向け、IoTでは、顧客からの要求がさらに複雑化、細分化すると考えられるが、「特に日本の顧客は、細かいところの要求が厳しいことも多いので、日本独自の要望をしっかりとらえながら、オートモーティブやロボティクスなど、産業機械系の顧客向けの製品を中核に、ビジネスを拡大していきたい」と語った。
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