今回は、シングル・ボード・コンピュータの代表格である「Raspberry Pi」に搭載される歴代のCPUチップを詳しく観察していこう。現在、第3世代品が登場しているRaspberry Piは、世代を追うごとに、CPUの動作周波数が上がり、性能がアップしてきた。しかし、チップを観察すると、世代をまたがって同じシリコンが使われていた――。
シングル・ボード・コンピュータ(以下、SBC)がIoT(モノのインターネット)のエッジ側で数多く使われている。コンピュータを名乗るにふさわしいコントローラもしくはプロセッサと各種インタフェース、さらに通信チップを備えている(通信チップはないものもある)。SBC分野でもっとも有名なものが「Raspberry Pi」。2012年に初代のRaspberry Piがリリースされ既に6年の歴史を持ち、今は第3世代まで進化している。この間、Raspberry Piは多くの採用事例、周辺機器を生み出し、機器開発のプラットフォームとしての知名度を高めている。類似の製品は、アジア企業(特に中国)からも続々と販売されている。Raspberry Piを模したネーミングの「ORANGE PI」、「BANANA PI」などは有名であり、日本でも入手が可能で、Raspberry Piと同様にエッジ・コンピューティングの用途で使われている。
中国製の多くの「○○○Pi」は、Allwinner TechnologyやRockchip Electronicsといった中国半導体メーカーのプロセッサを採用しているが、基本機能はRaspberry Piと変わらない。むしろCPUやGPU性能は中国製“○○○Pi”の方が、上回っている場合もある。なお、“○○○Pi”に搭載される中国製チップは、それ専用に開発されたものではない。有名なところでは任天堂が2016〜2017年に販売したゲーム機「ニンテンドークラシックミニファミリーコンピュータ」に使われたり、各種セットトップボックスなどでの実績を持っていたりする汎用プロセッサを流用したものである。
“○○○Pi”の名称ではないが、台湾ASUSが販売するThinker Boardや、韓国Grape RainやSamsungの「ARTIK」、台湾MediaTekの「LinkIT」などRaspberry Piに似たSBCも多くの採用事例を広げている。
本家Raspberry Piも年に数機種のボードを発売し、ラインアップを拡充している。CPUコアを進化させコンピューティング能力を高める方向と、通信機能の強化(IEEE 802.11acへの対応など)、さらにより小型化したZEROシリーズをリリースして面のラインアップを取りそろえている。いずれも一貫したコンセプトで開発されていて、初代から最新版までが同じインタフェースを備えるなどしている。
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