初代Raspberry Piは、Broadcomの「BCM2835」というチップを採用している。同チップは、TSMCの40nmプロセスで製造され、CPUはArmのクラシックCPUコア「ARM1176」、GPUにはBroadcomオリジナルの「VIDEO CORE IV」を搭載する。カメラ用ISP(画像信号プロセッサ)は非搭載。現在もこのチップはZEROシリーズで活用されている。CPUの動作周波数は700MHzだ。
ちなみにこのBCM2835はRaspberry Pi以外にも複数の製品に使われた実績も持っている。例えばセットトップボックスとして2010年代初頭に有名になった「ROKU」の第2世代製品「ROKU2」がある。必ずしもRaspberry Pi向けの専用チップとしてBCM283Xは生まれたわけではなかったのだ。
2代目のRaspberry Piには「BCM2836」が搭載された。同じく40nmプロセスで製造され、カメラISP機能を追加し、CPUコアをクアッドコア構成のArm Cortex-A7に入れ替えている。CPU動作周波数も900MHzに引き上げられた。インタフェース部は変更されていない。3代目に搭載された「BCM2837」も40nmプロセスで製造され、CPUコアのみを入れ替えArm Cortex-A53のクアッドコア構成になり、動作周波数も1.2GHzにアップした。一貫したインタフェースとGPUを持ち、CPUの入れ替えだけで進化を遂げている。なお第2世代のBCM2836からは、Raspberry Pi以外の製品に搭載されている事例はないようだ。
Raspberry Piは2018年モデルとして「Raspberry Pi 3 Model B+」を3月に発売した。図1は2018年3月に発売になったRaspberry Pi 3 Model B+の様子である。
通信モジュール部にはRaspberry Piのロゴを搭載した金属シールドが覆われ、また基板上には英国製の文字が入っている。基本はPi 3のブラッシュアップ版となる。動作周波数を1.2GHzから1.4GHzに引き上げ、かつWi-FiもIEEE 802.11ac対応となった。チップの動作周波数を200MHz上げるには電源電圧を上げる(電圧が上がるとトランジスタのスイッチング速度が上がるので、動作周波数は上がる)。あるいは、製造されたものの中で、ベストコンディション側で出来上がったものだけを選別するという方法もある(半導体チップの製造には出来具合にバラつきがあり、このクラスの性能のチップならばベストな出来具合のチップとワーストな出来具合のチップの間には、動作周波数にして200MHz程度の差が生じる場合もある)。しかしベスト品だけでは取得個数を減らしてしまうので、コストが上がってしまう。
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