手のひらサイズの安価な小型コンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)」は、2018年に“10周年”を迎えた。現在、ラズパイの用途は、当初の目的だった教育用途よりも、産業用途が上回っている。
手のひらサイズの安価な小型コンピュータ「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、ラズパイ)」は、2018年に“10周年”を迎えた。
2008年、Raspberry Piを開発する英国のチャリティ組織Raspberry Pi財団が法人化した。2011年までは社外秘で開発されていたRaspberry Piは、2012年2月に最初のモデル「Raspberry Pi 1 Model B」として発売される。販売されるやいなや、初日で10万台が売れるほどの話題となった。
以降、バージョンアップを重ねながら順調に出荷台数を伸ばし、2016年9月には累計出荷台数1000万台を、2017年12月には同1700万台を突破するに至っている。
2018年3月には、最新のモデル「Raspberry Pi 3 Model B+」を発売した。動作周波数が1.4GHzのクアッドコア「Arm Cortex-A53」を搭載。前モデルの「Raspberry Pi 3 Model B」に比べて性能が10%向上している。2.4GHz/5.0GHzのデュアルバンドWi-Fiや、Bluetooth 4.2を使用できる他、PoE(Power over Ethernet)や、SDカードが不要なネットワークブートに対応していることが特長だ。
日本でも、アールエスコンポーネンツが2018年6月27日からRaspberry Pi 3 Model B+の販売を開始した。
この10年間での最も大きな変化の1つは、産業用途への転換だろう。もともとは、子供や学生の教育向けとして開発されたRaspberry Piだが、近年は産業用途でも使われるようになってきている。これには、Raspberry Pi財団の創設者で、Raspberry Piの開発者でもあるEben Upton(エベン・アプトン)氏も「驚いた」と、2016年12月にEE Times Japanがインタビューした際に語っている(関連記事:「教育・ホビーから産業用途へ、ラズパイ5年目の進化」)。
Upton氏によると、産業用途への転換が見られ始めたのは2013年の半ばだった。工場の生産ラインでの利用や、(例えばディスプレイなどの)製品への統合といった形で利用され始めたという。Upton氏は「教育用の小型コンピュータとして欠かせない要素として考えてきた低コスト、頑丈、プログラマブルといった要素は、実は産業向けの要件にも合致する」と述べる。安価なRaspberry Piが、産業用途にも使われるようになったのは、ごく自然な流れだったのだろう。
Upton氏によれば、2018年6月の時点で、月産される50万〜60万台のうち、35万〜40万台、つまり約60%が産業用途向けとなっているという。産業用途が、当初の教育用途を上回っているのだ。2016年のインタビューで同氏は、「2016年は約400万台出荷されていて、そのうち半数となる約200万台が産業用途で使われているのは分かっている」と述べていたので、この2年間で産業用途の割合が増えたことになる。
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