Raspberry Pi財団は、この動向をしっかりと捉え、産業向けにも投資を進めてきた。その1つが、Raspberry Pi 3をベースにしたSoM(System on Module)「Raspberry Pi Compute Module 3(以下、Compute module 3)」である。産業用途や組み込み機器向けに小型化した。クアッドコアのCortex-A53と、1GBのLPDDR2メモリを搭載している。
Compute module 3については、NEC Display Solutions Europeが、2017年に出荷を開始した大型ディスプレイに、同SoMを組み込んでいる。これにより、デジタルサイネージなどを容易に実現できるようになるという。「特にデジタルサイネージは、Raspberry Piにとって大きなマーケットとなっている。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)を含むシンクライアントも、Raspberry Piのターゲット市場として伸びている分野の1つだ」(Upton氏)
Upton氏は「産業用途では長期にわたるサポートも重要になる」と強調する。「産業用途では、生産中止となるEOL(End of Life)はできるだけ避けたい。Raspberry Piはいくつかあるバージョンの中で、EOLを行ったのは初代の『Raspberry Pi 1 Model A』と『同Model B』のみだ。しかもそれらは、後継機種の『Raspberry Pi 1 Mode A+』『同Model B+』にそれぞれ置き換えている。モジュールでは、カメラモジュールのみEOLになっているが、これは残念なことに採用していたカメラメーカーが、そのカメラのEOLを決めたので、こうした決断をせざるを得なかった」(Upton氏)
さらに、さまざまな分野における認証を取得していることも、産業用途では有利になる。Raspberry Pi 3 Model B+では、39の認証を取得済みだ。
現在、Raspberry Pi 3 Model B+は英国で製造しているが、Upton氏は、「具体的な時期は決まっていないが、将来的にはソニー*)の稲沢工場(愛知県)でも製造する予定だ」と話す。現在、稲沢工場ではRaspberry Pi 3 Model B+の前世代品である「Raspberry Pi 3 Model B」を製造している。「ただ、Raspberry Pi 3 Model B+は製造プロセスが複雑なため、稲沢工場で製造するには、英国からの技術移転が必要になる」(Upton氏)。Upton氏は、Raspberry Pi 3 Model B+の生産台数目標について、「同Model Bと合わせて、年間700万台」と答えた。
*)正確には、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.