2008年から2018年の“最初の10年”で、Raspberry Piは市場での確固たる地位を築き、産業用途という思いもよらなかったマーケットでの道を開いた。では、“次の10年”はどうなるとUpton氏は考えているのだろうか。
Upton氏は、IoTのトレンドによるRaspberry Piへのニーズの変化を踏まえながら「Raspberry Piの今後については、中期的な視点では、ZigBeeに代表されるIEEE 802.15.4をサポートする必要があると考えている。主要な無線通信規格としてWi-Fi、Bluetooth、そしてIEEE 802.15.4がある。前者2つについては既にサポートしているので、あとはIEEE 802.15.4だろう」と語る。
「10年から15年という長期的な視点で言うと、Raspberry Piをさらに安価に提供していかなければならないだろう。IoTの用途によっては数十米セントなど1米ドルを切ることも必要になるかもしれない。ただ、現時点では、われわれにとっても販売代理店にとっても幸運なことに、35米ドルの現製品で十分に対応できるIoTのアプリケーションが数多くある」(Upton氏)
Raspberry Piは、もともとの目的である教育用途としても、大きく貢献している。Upton氏は、「われわれの使命は、ケンブリッジ大学でコンピュータプログラミングを学びたいという受験生を増やすことだった」と述べる。実際、前出の図版でも示した通り、出願数は、2008年には250人以下まで減少している。だが、減り続けた出願数が2017年には1100人にまで増加したのだ(入学できるのは、そのうち約90人だという)。
「増加した受験生が実際にRaspberry Piを使ってきたことを示す公式なデータは持ち合わせていない。ただ、ケンブリッジ大学の関係者に取材したところ、面白い傾向が分かった。面接官が受験生に、コンピュータプログラミングを始めるきっかけを尋ねたところ、多くの受験生の答えがRaspberry Piかロボットだったという」(Upton氏)。同氏は、「出願数の減少という問題は、英国の他の大学や、日本を含め他国でもみられる。ケンブリッジ大学以外でも、出願数の回復にRaspberry Piが貢献できればと思っている」と続けた。
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