今回は、100Gビット/秒(bps)と極めて高速な変調信号を光ファイバーで伝送する実験結果を紹介する。
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前々日に「チュートリアル(Tutorial)」と呼ぶ技術セミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、6件のチュートリアルが開催された。
その中から、シリコンフォトニクスに関する講座「Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代光接続に向けたシリコンフォトニクス)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者は、ベルギーの研究開発機関imecのJoris Van Campenhout氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、光信号を電気信号に変換する「光検出器」の構造と性能を解説した。今回は、100Gビット/秒(bps)と極めて高速な変調信号を光ファイバーで伝送する実験結果をご紹介する。
始めは、疑似ランダムビット列(PRBS:Pseudo Random Bit Sequence)のNRZ(Non Return to Zero)符号を100Gbpsで光変調し、光ファイバーによって信号伝送を試みた結果である。
光信号の変調には、ゲルマニウムシリコン(GeSi)化合物半導体の電界吸収変調器(EAM:Electro-Absorption Modulator)を使用した。変調方式はオンオフ変調(OOK:On-Off-Keying)である。EAMへの電気信号は、25GbpsのPRBSをFPGAによって4チャンネル発生し、これらをマルチプレクサで100Gbpsにまとめたもの。光ファイバーは、長さが500mの標準シングルモードファイバー(SSMF:Standard Single Mode Fiber)と、長さが2kmの分散シフトファイバー(DSF:Dispersion Shifted Fiber)である。
光検出器には、ゲルマニウム(Ge)とシリコン(Si)のヘテロ接合フォトダイオードを採用した。フォトダイオードの出力信号を、デマルチプレクサによって25Gbpsの4チャンネル信号に分割し、受信データのビット誤り率をカウントしている。
光伝送実験で重要なのは、ビット誤り率(BER:Bit Error Rate)と光受信電力、受信信号波形である。光受信電力を小さくすると、通常はビット誤り率(BER)が増加する。光受信電力、言い換えると光送信電力は、なるべく小さくしたい。誤り訂正回路によって実用的な領域にまで誤り率(訂正前の誤り率)が下がったときの光受信電力をどの程度まで小さくできるかが、ポイントとなる。
実験では、直接接続(B2B:Back to Back)、SSMF(500m)、DSF(2km)で誤り率と信号波形を比較した。SSMFでは光受信電力が2dBm(1.6mW)以上、DSFでは光受信電力が5dBm(3.2mW)以上になると、誤り率を許容範囲にまで下げることができた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.