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シリコンフォトニクスの光検出器福田昭のデバイス通信(155) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(15)

今回は、光信号を電気信号に変換する「光検出器」について解説するとともに、ゲルマニウム光検出器の試作品について動特性を示す。

» 2018年07月25日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

光検出器をゲルマニウムの光導波路で作る

 半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前々日に「チュートリアル(Tutorial)」と呼ぶ技術セミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、6件のチュートリアルが開催された。

 その中から、シリコンフォトニクスに関する講座「Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代光接続に向けたシリコンフォトニクス)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者は、ベルギーの研究開発機関imecのJoris Van Campenhout氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前々回前回では前後編で、「電界吸収変調器((EA:Electro-Absorption)変調器)」の構造と試作品の性能をご紹介するとともに、これまでに学術論文等で報告された3種類の光変調器の性能をご説明した。今回は、光信号を電気信号に変換する「光検出器」を解説する。

 シリコンフォトニクスでは、シリコン光導波路によって伝送されてきた光信号を、半導体の光検出器(フォトダイオード)によって電気信号に変換する。光信号の波長は1550nmと長く、シリコン(Si)ではエネルギーバンドギャップ(バンドギャップ)が広いので光信号を吸収しない。そこで光検出器の材料には、バンドギャップの狭いゲルマニウム(Ge)を使う。ちなみにGeの室温におけるバンドギャップは約0.67eV(エレクトロンボルト)、基礎吸収端波長は1850nmである。

 ゲルマニウムの光検出器は、シリコン光導波路と重ねるように細長いゲルマニウムの光導波路を作成した構造をしている。シリコン光導波路とゲルマニウム光導波路を結合させることで、シリコン光導波路中の光ビームをゲルマニウム光導波路にも引き込む。

 光検出器の横方向はこのように光導波路である。そして縦方向には、GeとSiによるpinヘテロ接合フォトダイオードを形成している。Geがp型とi型の半導体層、Siがn型の半導体層である。このpinフォトダイオードに逆方向の電気的なバイアスをかけた状態で光ビームが入ってくると、電流(光電流)が発生する。

 試作したゲルマニウム光検出器の性能は、光電流の発生量が1W当たり約1A。暗電流は、pin接合フォトダイオードのバイアス電圧が−1Vのときに100nA未満である。

シリコンフォトニクスで使われるゲルマニウム光検出器の構造。左は断面構造図。シリコン(Si)光導波路の上にゲルマニウム(Ge)の光導波路を載せている。電気的にはpinヘテロ接合フォトダイオードである。中央は光導波路方向に沿う方向の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像。右は光検出器全体の鳥瞰図。出典:imec(クリックで拡大)

50Gビット/秒の超高速光信号を検出

 試作したゲルマニウム光検出器の動特性を示そう。挿入損失S21は、3dB帯域で50GHzを確保した。pin接合フォトダイオードのバイアス電圧条件は、−1Vと−2Vである。

 実際に50Gビット/秒(bps)の超高速光伝送データを検出したときの、検出信号(電気信号)波形を観測した。バイアス電圧条件が−2Vのときに、出力信号の波形は比較的良好なアイパターンを得ている。

試作したゲルマニウム光検出器の動特性。左は挿入損失S21の測定結果。右は50Gbpsの超高速光信号を検出したときの出力信号波形。出典:imec

次回に続く

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