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データセンターを支える光伝送技術 〜エンタープライズデータセンター編光伝送技術を知る(3)(3/3 ページ)

» 2018年08月16日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]
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エンタープライズデータセンターの光伝送部品

 エンタープライズデータセンターにおけるネットワーク部品はさまざまである。一般的に、短距離、例えば10GbEの場合、3m以下のリンクでは電気ケーブルが用いられるが、それ以上では光ファイバーケーブルが用いられる。

 電気ではRJ-45が用いられてきたが、現在広く使用されている10GbEでは光トランシーバーのSFPやQSFPのソケット互換であるダイレクト・アタッチ・ケーブル(DAC: Direct Attach Cable)という選択もある。

 データセンターの光リンクは、一般的に、光送受信あるいは光トランシーバーを装置に挿入し、光ファイバーケーブルのコネクターをそれに挿入して接続する。この挿入する形式のトランシーバーを「プラガブルモジュール(Pluggable Module)」という。

 光トランシーバーは、電気インタフェースやメカニカル特性を仕様化した形状(Form Factor)と、伝送仕様の組み合わせで型式が決まる。さまざまなForm Factorが存在するものの、現在では種類が限定されてきている。

 1GbEから100GbEでは、SFPとQSFPというForm Factorが使用される。Form FactorはPCBとの電気インタフェースで特徴付けられる。SFPは電気主信号が送受1本ずつ、QSFPは送受4本ずつである。単にSFPやQSFPという場合、主信号は1Gbpsだ。SFP+やQSFP+のように“+”を後ろにつける場合は10Gbps、SFP28やQSFP28のように”28”をつける場合は28Gbps、”56”をつける場合は56Gbpsを意味している。

 主信号の仕様に関してはOIF(Optical Internet Forum)で規格化されている。現在は、112Gbpsの規格化に向け議論が進んでいる。

 SFPもQSFPもそれぞれバックワードコンパチだ。このため、10GbEのSFP+ソケットを持つスイッチは、SFPを挿入して1GbEのパケットも交換できるように設計されている場合が多い。

 ビルのフロアや部屋に設置されることの多いエンタープライズデータセンターでは短距離のリンクが多く、AOC(Active Optical Cable)が用いられることが多い。AOCは光送受信(トランシーバー)モジュールと光ファイバーケーブルを一体化したようなケーブルで、40GbEでは300mまで伝送可能である。ケーブルの両端は光モジュール用ソケットに挿入できる電気コネクターで、電気-光と光-電気変換機能を持ち、ケーブル部分の中は光ファイバーという構成になっている。長所は、電気-電気で性能が保証されるので光伝送に関わる設計が不要となり、光コネクターが無く、独自の光仕様のため低コストなこと。短所は、長さを指定して購入しなければならないことと、故障やレイアウト、データレート変更の時はケーブルを敷設しなおす必要があることである。

 図3中にAOCの例を示す。コネクターの両端はSFPやQSFPのソケットに挿入できる形状となっている。また、片端は40GQSFP+で、反対端は4本の10GSFP+、という構成のものもある。これは「ブレイクアウトケーブル(Breakout Cable)」と呼ばれていて、サーバとAccessスイッチのリンクに用いることができる。40GQSFP+側には、4つのレーザー/受光素子が搭載されている。

図3 データセンターの光部品(クリックで拡大)

筆者プロフィール

高井 厚志(たかい あつし)

 30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。

 日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。

 さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。


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