情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク総合研究センターは2018年8月20日、周波数利用効率を大幅に向上する新たな無線アクセス技術「STABLE」を開発。横須賀リサーチパーク(YRP)にて屋外伝送実験を行った結果、周波数利用効率を従来の2.5倍に向上できることを確認したと発表した。
情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク総合研究センターは2018年8月20日、周波数利用効率を大幅に向上する新たな無線アクセス技術「STABLE(ステーブル:Simultaneous Transmission Access Boosting Low-latEncy)」を開発し、神奈川県の横須賀リサーチパーク(YRP)にて屋外伝送実験を行った結果、周波数利用効率を従来の2.5倍に向上できることを確認したと発表した。
今回の実証実験を行ったSTABLEは、5台の端末局が同一周波数、同日時間領域を使用し、小サイズのデータ(20バイト程度)をミリ秒オーダーで伝送できる技術だ。複数の端末局が同一周波数、同一時間領域を使用すると、基地局ではそれらの端末からの信号が重なって受信される。NICTが開発した干渉抑圧・除去技術を基地局に実装することで、各端末から送信されたデータを復元できることを実験にて確認した。その結果、現行のLTE方式の上り回線と比較し、周波数利用効率を約2.5倍に向上できたという。
従来のLTE方式の上り回線では、同一周波数、同一時間領域で基地局アンテナ1本当たり1台の端末しか収容できなかった。そのため、同一周波数、同一時間領域を使用するためには、端末間の干渉を軽減するために、複数アンテナによる空間分割多元接続などを用いてきた。
STABLEは、こうした多元接続技術を用いなくても周波数共用を行えるが、多元接続技術との併用も可能なので、さらなる周波数利用効率の向上も図ることができるとする。
5G(第5世代移動通信)の用途の1つに、多数の端末を接続する超多数接続があるが、そこでの要件は100万台/km2となっている。NICTは、STABLEにより、その要件を超える162万台/km2の接続密度が理論上可能になったとする。
さらに、今回の実験で使用した干渉抑圧・除去技術は処理遅延が小さいことも特長だという。屋外伝送実験では、この処理遅延を含め、4ミリ秒未満の遅延で、5台の端末から送信された信号を全て復元できることを確認した。これにより、5Gにおいて、超多数接続をミリ秒オーダーの遅延で実現する無線システムの実現が期待できるという。
NICTは今後、周波数利用効率を最大4.5倍まで向上することを目指すとしている。
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