2018年7月1日は、次世代無線LANの規格であるIEEE 802.11ax(以下、802.11ax)にとって記念すべき日となる。エンジニアらは、同規格の初期ドラフトがこの日に認可されると見込んでいる。
2018年7月1日は、次世代無線LANの規格であるIEEE 802.11ax(以下、802.11ax)にとって記念すべき日となる。エンジニアらは、同規格の初期ドラフトがこの日に認可されると見込んでいる。
この段階に到達するまで、予想以上に長い年月がかかった。1つ目と2つ目のドラフトは、それぞれ2016年11月と2017年9月に、認可に必要な75%の同意を得ることができなかった。ある時点では、評論家らは802.11axに準拠した初期の製品が2017年に出荷される可能性があると考えていた。
通常、IEEEで標準化にかかる時間は約3年だ。802.11axでは、現時点で標準化に4年もかかっていることになる。これは既存の802.11ac規格にかかった年月よりも長いが、複雑な802.11n規格に比べればまだ短い。
ただ、802.11axについては、規格が複雑過ぎるとの批判もある。802.11axは、既存の802.11acに比べ、データ転送速度を30%向上し、レイテンシを4分の1に抑えつつ、802.11acと同じ周波数帯でのデータ容量を4倍にすることを目指している。
これらを実現するため、802.11axには、既にセルラーネットワークに導入されている、スペクトル効率化のための接続方式OFDMA(直交周波数分割多元接続)が採用されている。さらに、マルチユーザーMIMO対応や、1024QAMの導入も行われた。
市場調査会社のDell’Oro Groupは、802.11axの標準化の遅れを踏まえ、2018年における、エンタープライズ向け802.11ax対応アクセスポイントの出荷台数予測を、75万台から25万台に下方修正した。アクセスポイントは主に、暫定版規格に準拠した低価格のユニットになるという。Dell’Oro Groupは、2018年における802.11ax対応アクセスポイントの市場規模を50億米ドルと予測しているが、この予測も当初から5億米ドル下方修正されている。
Dell’Oro GroupのビジネスアナリストであるTrent Dell’Oro氏は、「当社が実施した聞き取り調査によって、主要なエンタープライズ向けのシステムメーカーが、802.11ax対応の製品の発表を、2018年第2四半期から、同年第4四半期もしくは2019年第1四半期に延期していることが分かった」と述べる。
Dell’Oro氏によると、2018年に出荷されるWi-Fiアクセスポイントの「圧倒的多数」を占めるのは、やはり802.11ac対応の製品だという。一方で同氏は、HuaweiやH3C(HP(Hewlett-Packard)の中国事業のスピンアウト)といったメーカーが、802.11ax対応品を市場に投入できるよう、積極的に取り組んでいることにも言及した。
IntelやQualcommなどは、暫定版の802.11axに準拠したチップを約18カ月前からサンプル出荷している。Qualcommは、KDDIが、Qualcomm製の「IPQ8078」チップを用いてNECが製造した、802.11axアクセスポイントの宣伝を既に行っていることを明らかにしている。Huaweiも、今後製造予定のシステムに同じチップを採用する予定だという。
Qualcommのコネクティビティプロダクトマーケティング担当マネジャーを務めるJesse Burke 氏は、「当初は、標準規格の策定と認定プロセスの進行状況に関して非常に楽観的な見解が示されていたが、関係者が真実を明らかにしていれば、他の意見も出ていたかもしれない」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.