DECTは、ULEという形で、コードレス電話以外での応用が始まっていった。家庭用セキュリティカメラやテレビ電話機能付きドアホン、スマートプラグ、スマートキー、スマート照明など、Webで公開されているULE機器認証取得済み製品リストには、スマートホームを構成する機器、端末が多く並ぶ。
そして、森川氏は「Amazon Alexa、Google Homeなどクラウドベースの音声認識サービスの普及で、スマートホーム端末の音声コントロール対応が当たり前になりつつある。現状、こうした用途では、無線通信にはWi-FiやBluetoothが使用されているケースが多い。ただ、より安定した品質で音声を伝送し、確実にスマートホーム端末が動作させたいというニーズが高く、音声通信を得意にするDECT/ULEに注目が集まり、採用が拡大するきっかけになっている」と説明する。
先述したULE機器認証取得済み製品リストをみると、日本メーカーの名前は、パナソニック1社しかなく、デジタルコードレス電話での普及と同様、IoT領域でも欧米などの海外が先行している。日本でのDECT/ULEが遅れている点について、森川氏は「日本では、欧米とは異なる特殊な事情があったから」と話す。
DECT/ULEが使用する1.9GHz帯は、日本ではPHSに割り振られている周波数帯であり、そのために2010年の省令改正まで日本国内ではDECTを利用することができず、古くから1.9GHz帯がDECT占有の周波数帯となっている欧米よりも普及が遅れたのだ。また、2010年から国内でもDECTの使用が可能になったわけだが、構内PHSとも呼ばれる自営PHSと周波数帯を共用するために、使用できる周波数帯が狭く、技術的な制約も多く課されていた。
ただ、そうした制約も2017年10月に大きく緩和された。使用可能周波数帯が広がり、より密集した設置環境の接続性が改善された他、それまでよりも最大2倍の転送速度が得られるようになり、広帯域な通信が行えるようになった。ようやく、日本国内でも、欧米とほぼ同様にDECT/ULEが使用できる環境が整ったわけだ。森川氏は「日本でも、IoT/スマートホーム領域でのDECT/ULEの普及を加速させていきたい」とする。
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