実績あるメモリ技術は、これまで長い間、好況と不況のサイクルを繰り返してきた。3D(3次元) NAND型フラッシュメモリの価格が下落しても、DRAMはまだ堅調な成長を遂げている。しかし、その状況はどれくらいの間続くのだろうか。
実績あるメモリ技術は、これまで長い間、好況と不況のサイクルを繰り返してきた。3D(3次元) NAND型フラッシュメモリの価格が下落しても、DRAMはまだ堅調な成長を遂げている。しかし、その状況はどれくらいの間続くのだろうか。需要が多様化し、中国から新しいベンダー各社が台頭している状況にもかかわらず、このような浮き沈みは常に生じるのだろうか。
DRAM市場の重要な特徴の1つに、現在の同市場には、Micron Technology(以下、Micron)とSK Hynix、Samsung Electronicsの3社の大手サプライヤーしか存在しないということがある。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当バイスプレジデントを務めるBrian Matas氏は、EE Timesの電話インタビューの中で、「これら3社は、自社の生産能力に対して厳しく目を光らせている。それと同時に、特にデータセンターやサーバアプリケーションなどからは、高性能および高密度部品に対する強い需要がある」と述べている。
ある意味、スマートフォンやタブレットは、かつてDRAM業界の主要なけん引役を担ってきたPCの代わりだといえる。Matas氏は、「スマートフォンの新たな購入サイクルが広がりつつある。スマートフォンの性能が向上して、搭載されるDRAMの数が増加していても、初期段階のように、年間成長率が大規模かつ爆発的に上昇したり、スマートフォン向けの出荷数量が増加することは、恐らくないだろう」と述べる。
Matas氏は、「現在、FacebookやGoogle、Amazonなど、大量のDRAMを調達しているメーカーは、大規模なネットワークストレージシステムやサーバアプリケーションを稼働させるために必要な、あらゆる種類のメモリを調達しようとしている。これらのメーカーは、DRAM生産能力に限りがあることを理解しており、割増価格を支払うことを厭わない。また、スマートフォンだけでなく、自動車分野でもDRAM容量が大幅に増加している。
Micronでエグゼクティブバイスプレジデント兼CBO(最高業務責任者)を務めるSumit Sadana氏は、電話インタビューの中で、「当社は、現在のDRAM市場が以前とは根本的に異なると考えている。DRAMの需要が多様化し、ベンダー各社の買収合併が進んでいるからだ」と述べる。
同氏は、「前進し続けている業界は、今まで以上にさらに安定性が増していくと確信している。これこそが、買収合併の効果だ。Micronは、生産能力の拡大についてさらに注意深く検討し、需要傾向や顧客企業の要件への対応力を高めたい」と続けた。
またSadana氏は、DRAMが現在向かうべき多様な分野に関しては、Matas氏の見解と同じく、「需要全体の3分の2はもはや、PC以外の分野がけん引している」と述べた。「市場では現在、モバイル分野を始め、クラウドや自動運転車など、もっと成長の速い分野の他、機械学習(マシンラーニング)などAI(人工知能)向けの高帯域メモリの分野などが、優勢を確立している。業界にとって2018年は、過去最高となる利益の達成が見込まれる。Micronも、今後5〜10年間で堅牢な産業環境を実現できるとみているようだ」(同氏)
Sadana氏は、好調な見通しを主張する理由として、AIや自動運転車などのさまざまな革新的なトレンドが、現在まだほんの初期の段階にあるということを挙げている。特に自動運転車市場では、膨大な量のDRAMが必要になってきている。この他にも需要をけん引する要素として、データセンター向けのサーバ、IoT(モノのインターネット)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、暗号通貨などが挙げられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.