さらに、パナソニックが蓄積してきたノウハウをAIに生かすために、「E3-AI」(イーキューブAI)」というコンセプトを打ち立てた。「Embedded AI」「Explainable AI」「Evolutional AI」である。
Embedded AIは、デジタル家電の開発において培ったLSI設計技術などを生かし、製品やシステムの小型化を図り、性能とコストを両立させることを目指すもの。「ディープラーニングの大規模な回路を、性能はそのままで小型チップに実装するなど、既に成果が出ている。ここは、パナソニックのDNAが宿っている部分だ」(九津見氏)
Explainable AIは、機械学習において「なぜ、誤った画像認識が行われたのか」「どこを再学習させれば画像認識の精度が上がるのか」というのを可視化する技術を活用して、開発を進めることだ。これによって、AIのチューニング(性能向上)にかかる時間を大幅に短縮できるとする。
Evolutional AIは、組み込み機器などに実装したAIを最新のモデルに変えていくという取り組みである。組み込み機器を使っていくうちに得られたデータで再学習させたモデルを、再度実装していく仕組みだ。再学習用のデータは、認識の確信度が低いものなどを選択し、それらのデータのみを使って再学習させることで、学習のコストを下げることに成功している。
パナソニックは、E3-AIを含むディープラーニングの技術とデータ分析の技術で、ホームテクノロジー、モビリティ、エネルギーの3つの分野にフォーカスしていく。
さらにパナソニックは、AIを使いこなせる人材を1000人にまで増やす。九津見氏によれば、2017年だけで社内からのAIに関する相談が80件ほどあったという。そこで、AIについて相談できる社内向けの相談サービス「DAICC(Data & AI for Co-Creation:ダイク)サービス」を展開し始めた。大阪大学と共同でプログラムを行うほど、本格的に取り組みを進めている。
九津見氏は、「AI(Cyber)にパナソニック(Physical)を掛け合わせることで、Society 5.0の世界を実現させていく。モノづくり、コトづくりをAIによって変革することで、Society 5.0に挑戦していきたい」と強調した。
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