「テクノロジーで人体の限界を超える」 SEMICON講演 : ロボットから医療機器まで (3/3 ページ)
AMIの小川晋平氏
最後に登壇したAMI(Accute Medical Innovation)の代表取締役である小川晋平氏は、現役の循環器内科医だ。同氏はAMIで、心疾患の自動診断アシスト機能を備えた新しい聴診器の開発を手掛けている。
熊本県に拠点を置く小川氏は、2016年の熊本地震の際、聴診器くらいしかまともな医療機器がない中で、診察や治療を行った。その際、非侵襲や携帯性といった聴診器の優れた点をあらためて認識したという。小川氏によれば、聴診器は、医療機器の中で唯一と言ってよいほどプロダクトの進化が止まっている領域だという。「聴診器は約200年前にフランスで開発されて以来、本当の意味でのイノベーションがない医療機器。ただ、(聴診器で聞き取れる)音の解析技術が発展すれば、改善の余地があるのではないかと考えた」(小川氏)
そこで小川氏は、これまでの聴診器を超えた新しい聴診器、「超聴診器」の開発に乗り出す。1年ほど前から資金が集まり始め、現在は、電位差を大きくする技術など7個の特許を申請し、うち4個は取得済みだ。
小川氏は、超聴診器を使って大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)の早期発見に取り組んでいる。大動脈弁狭窄症は、大動脈弁の炎症や硬化により、大動脈弁が開きにくくなって、血液を送り出しにくくなる症状だ。現在、日本には約100万人の患者がいると推定されている。既存の聴診器よりも音を聞き取りやすい超聴診器であれば、心音の異常をよりはっきりと聞き取れるので、大動脈弁狭窄症の早期発見に役立つという。
AMIが開発している「超聴診器」の概要。なお、超聴診器には、「各種バイタルサイン計測機能搭載心臓弁膜症自動検出機能付遠隔医療対応聴診器」という、舌をかみそうな正式名称がある 出典:AMI(クリックで拡大)
さらに、音をスペクトログラムで可視化し、耳だけでなく目でもデータを確認できるようにしている。これにより、遠隔での聴診も可能になると小川氏は述べる。既存の聴診器では、聴覚のみで遠隔から聴診するのは難しい。異常な心音がほとんど聞き分けられないからだ。AMIの超聴診器を使うと、遠隔地にいる患者に超聴診器を胸に当ててもらい、聴診を行える可能性がある。AMIは現在、遠隔聴診の実現を目指すプロジェクトを進めているさなかだ。
小川氏は、「医師の耳を超える聴診器を開発したい。最終的には、血圧を測定できるところまでを目指している」と語った。
「飲む体温計」、胃酸で発電し睡眠中に体温測定
東北大学の中村力研究室と慶應義塾大学の仰木裕嗣研究室は、「SEMICON Japan 2018」で、錠剤型の「飲む体温計」を展示した。胃酸で発電したエネルギーで動作し、睡眠中に基礎体温(深部体温)を測定できる。
アルツハイマーの解明目指す、脳組織チップの開発へ
ベルギーの研究者らは、FacebookのMark Zuckerberg氏ならびに同士のパートナーであるPriscilla Chan氏が主導する慈善団体「Chan Zuckerberg Initiative(CZI)」から、パーキンソン病のメカニズムを研究するための新たなチップの開発に投じる105万米ドルの資金を調達した。
量子ビットの高精度制御と高速読み出しを両立
理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは、高精度制御に適した「スピン1/2量子ビット」と高速読み出しに適した「ST量子ビット」を結合させ、両方式の互換性を確保することに成功した。
PFNがお片付けロボットを公開【動画あり】
Preferred Networks(以下、PFN)は2018年10月15日、開発中のパーソナルロボットシステム「全自動お片付けロボットシステム」のデモを公開した。10月16〜19日の会期で開催される展示会「CEATEC JAPAN 2018」(会場:千葉市・幕張メッセ)で一般公開する。
ゆっくり歩き、速く走る「ロボット結晶」を開発
早稲田大学の研究グループらは、歩いたり走ったりして移動することができる「ロボット結晶」を開発した。その推進力を発生させるメカニズムも明らかにした。
産業用ロボット、2020年まで年平均15%で成長
近年、工業製品や商品などをロボットが製造するケースがますます増えている。産業用ロボットのトレンドに関する最近の研究によると、特にアジア、そして電子機器製造での需要が高まっており、今後数年間の技術発展によって、ロボットはさらに多くの能力を持つようになるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.