「AIなどがこれだけ発展してきた現代でも、つらい作業に従事している人たちが大勢いる。これこそ、テクノロジーが解決すべき課題だ」と主張するのは、“人型重機”の開発を手掛ける人機一体の社長、金岡博士氏である。
金岡氏は、「研究の現場には、圧倒的な知見の蓄積があるのに、世の中にそれが出ていない。現在の産業界では、全く使われていない」と述べる。そこを何とかするには、ベンチャーしかなかったと同氏は言う。
同氏は現在のロボットについて、開発から社会実装に至るために必要なのは「圧倒的なインパクトだ」と主張する。「ロボットに無関心の人でさえ無視できなくなるような、そんなインパクトが足りない。これまでのロボット研究者は礼儀が良過ぎたのだ」(金岡氏)
“圧倒的なインパクト”を与えるべく、人機一体が開発しているのが、マスタースレーブシステムを搭載した二足歩行の人型重機である。「身長4mの人型重機をその辺を歩いているのを見たら、どう思うか? 未来が来た! そう思うはずだ」と金岡氏は聴衆に問いかける。
人機一体が開発する人型重機は、人間が遠隔から操作する。重い物を持ち上げるのはもちろん、なでるような優しい動きもできる。ロボットが見ている物や触れている物の感触は、カメラやセンサーを介して操作者に伝わるようになっている。現在は上半身、下半身と分けて開発しているが、例えば下半身では、歩いている地面が硬いのか柔らかいのか、そういったことも操作者には伝わる。そして操作者は、ロボットの足のどの部分に、どのくらいの負荷をかけるのか、といった細かい制御もできるという。人機一体は、こうしたきめ細かい制御ができる、トルク制御のアクチュエーターの開発も進めている。また、2019年には、上半身と下半身を合体させた全身バージョンを製作する予定だ。
「われわれが人型重機で目指すのは、“人馬一体”のようなものだ。乗馬では、騎手と馬が一体になることで、人間と馬が別個の場合にはできないようなことをしている。人型重機も、まさにこれを実現しようとしている。人間とロボットが力学的にインタラクションすることで、お互いの能力を、一つの力学系として発揮すること。それを目指している」(金岡氏)
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