アナログ・デバイセズ(ADI)は、「オートモーティブ ワールド 2019」で、「想像を超える可能性」をテーマに「DIGITAL COCKPIT」「ELECTRIFICATION(電動化)」「ADAS」など5つのカテゴリーに分けて、最新の半導体ソリューションを紹介した。
アナログ・デバイセズ(ADI)は、「オートモーティブ ワールド 2019」(2019年1月16〜18日、東京ビッグサイト)で、「想像を超える可能性」をテーマに「DIGITAL COCKPIT」「ELECTRIFICATION(電動化)」「ADAS」「POWERTRAIN」「LED LIGHTING」と5つのカテゴリーに分けて、最新の半導体ソリューションを紹介した。
DIGITAL COCKPITに向けて提案したのが、車載カメラ向けバス「C2B(Car Camera Bus)」技術を用いたHD映像の伝送である。C2Bは、安価なUTP(シールドなしツイストペア)ケーブルを用いて、最大720pあるいは、1080iのHD映像信号を伝送することができる。非圧縮で映像を伝送するため、遅延もほとんどないという。
部品コストを抑えたいグレードの車両はこれまで、バックモニターなどにアナログカメラを搭載し、標準画質のNTSC信号をUTPケーブルで伝送していた。最近は、高画質の車載カメラが相次ぎ登場しているが、これを採用するには高価な画像伝送システムが求められている。
ADIが提供するC2B対応のトランスミッター/レシーバーICを用いると、軽量で安価な従来のUTPケーブルを活用して、高解像度カメラを用いたシステムへと容易にアップグレードすることができる。通信距離は最大30mまで対応可能なことを確認している。
もう1つは、車載オーディオバス「A2B(Automotive Audio Bus)」技術に対応したトランシーバーICを用いた提案である。A2B技術は、UTPケーブルを用いて複数チャネルのオーディオ信号や制御信号を、クロック信号や電源とともに伝送/供給することが可能である。
データ転送速度は50Mビット/秒と高速で、遅延時間は50マイクロ秒と短い。最大11ノードまでデイジーチェーンを構成することができる。EMC(電磁両立性)やEMI(電磁妨害)、ESD(静電気放電)などの要件もクリアしている。
ブースでは、A2B応用システムを搭載したデモカーを用意し、快適な車内コミュニケーションの事例を紹介した。具体的にはNTTドコモのインテリジェントマイク技術とA2B技術を組み合わせることで、3列シートの広い車室内であっても、低遅延で違和感のない会話ができたり、走行音などをキャンセルして音声を正しく認識し、機器を制御したりするデモを行った。
「ELECTRIFICATION」に対しては、ハイブリッド構成の降圧DC-DCコントローラー「LTC7821」を提案した。48V電源システムが搭載されるマイルドハイブリッド車(MHEV)や通信機器用電源などの用途に向ける。
LTC7821は、スイッチドキャパシター回路と同期整流式の降圧DC-DCコントローラー回路を組み合わせて1つの回路にした。48Vの入力電圧をスイッチドキャパシター回路でいったん半分の24Vまで降圧し、その後DC-DCコントローラー回路で、目的とする3.3Vや1.2Vといった電圧まで降圧する。
これまでは、2段階の降圧を個別のモジュールで行っていたため、基板の占有面積も大きかった。1kW出力の一般的な降圧コンバーターの場合、外形寸法は2.3×1.45インチとなる。これに対してLTC7821は1.45×0.77インチと、ほぼ3分の1の占有面積にできるという。効率も従来品の95%に対し、LTC7821は97.1%(スイッチング周波数500kHz)と高い。
この他、開発中の360度高精細デジタル回転角センサーもデモ展示した。高い精度で回転角を計測できるAMR(異方性磁気抵抗)センサーと、消費電力が極めて小さく360度の計測に適したTMR(トンネル磁気抵抗効果)センサーを組み合わせた製品である。
技術の異なる2つのセンサーでシステムを構成することにより、冗長性を持たせることができ、共通要因故障を最小限に抑えることが可能となる。自動車の機能安全規格「ISO 26262」で最も高い安全レベル「ASIL-D」の要件に準拠した。EPS(電動パワーステアリング)や電動ブレーキブーストといった用途に向ける。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.