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“ハイブリッド構成”の降圧DC-DCコントローラー実装面積が従来比50%減に

Analog Devices(ADI)は、入力電圧範囲が10〜72VのDC-DCコントローラー「LTC7821」を発表した。スイッチドキャパシター回路と同期整流式降圧DC-DCコントローラー回路を組み合わせ、1チップにした製品で、従来に比べて実装面積を最大50%低減できる。

» 2018年01月12日 11時00分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

“ハイブリッド構成”のDC-DCコントローラー

 Analog Devicesの日本法人アナログ・デバイセズ(以下、ADI)は2018年1月12日、10〜72Vの広い入力範囲を持つ降圧同期DC-DCコントローラー「LTC7821」を発表した。出力電圧範囲は0.9〜33.5Vで、出力電力は最大500W。主に、48Vのバス電圧を使用するテレコム、データ通信、データセンターなどの他、中間バスコンバーター、高電流電力供給システムといった用途に向ける。

 LTC7821の最大の特長は、スイッチドキャパシター回路と同期整流式降圧DC-DCコントローラー回路を組み合わせて1つの回路にしたことだ。ADIはこれを「ハイブリッド降圧同期コントローラー」と呼ぶ。

 この“ハイブリッド回路構成”により、48Vから3.3Vや1.2Vに1つの回路で降圧できる上に、基板上の実装面積が従来の最大50%にまで小型化できるようになるという。

 48Vから、ロジックICなどの駆動電圧である1.2Vや3.3Vなどに降圧するには、いったん5〜12Vの中間電位に降圧し、それをさらに目的の電圧に降圧するのが一般的だ。ただ、この方法だと基板サイズがかなり大きくなり、ノイズも増加する。

48Vから3.3Vなどに降圧する時の従来の構成。中間バスコンバーターで巨大な回路が必要になり、高価なオンボードモジュールなどを使わざるを得なかった 出典:ADI(クリックで拡大)

 実はLTC7821も、スイッチドキャパシター回路でいったん中間電位を作り、その後DC-DCコントローラー回路で任意の電圧まで降圧する仕組みになっている。その意味では従来と同様だが、回路としては1つなので、小型化が可能になる。

LTC7821のハイブリッド回路 出典:ADI(クリックで拡大)
LTC7821の評価基板(幅は約15cm)の表面と裏面。赤枠がLTC7821である。コンデンサーを追加することで、スイッチドキャパシター回路でどれくらいの中間電位まで降圧するかを調節できるようになっている(クリックで拡大)

 スイッチドキャパシター回路で中間電位に降圧するので、DC-DCコントローラー回路のMOSFETにかかるストレスが軽減されることも利点である。高価な高耐圧MOSFETではなく、比較的安価なMOSFETを使えるようになるからだ。

 さらに、スイッチドキャパシター回路を使用していることから、スイッチング周波数を500kHzと従来の約3倍に高めることができたという。スイッチング周波数が上がればコンデンサーなどの周辺部品を小型化できる。なお、スイッチング周波数は外付けの抵抗で200kHz〜1.5MHzの範囲で設定できる。

 加えてLTC7821は、500kHz時に97%という高い効率も実現した。

500kHz時に97%という高い効率を実現している 出典:ADI(クリックで拡大)

 より高出力の用途に対応する場合、LTC7821を並列に接続して動作させ、電流シェアリングによって出力電流を倍増することも可能だ。

電流シェアリングの際、2つのICの出力電流にがほぼ同等になっている 出典:ADI(クリックで拡大)

 LTC7821のパッケージは5×5mmのQFN32。既に量産を開始していて1000個発注時の単価は5.20米ドルとなっている。その他、ADIはLTC7821について設計サポートも行っている。

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