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見えないところで広がる中国半導体の勢力図製品分解で探るアジアの新トレンド(35)(2/2 ページ)

» 2019年01月28日 11時30分 公開
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分解してみて初めて分かる、中国半導体の勢力

 前置きが長くなってしまったが、ここからはいつもの分解ネタである。

 図1は米Googleが2018年に販売を開始したセキュアキーデバイス「Google Titan Security Key(以下、Titan)」だ。PCなどと連携させることでフィッシングメールをほぼゼロにできるというGoogle推奨のセキュアデバイスである。米国から輸入して分解した。

図1:2018年に発売された「Google Titan Security Key」の基板 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 内部にはセキュアマイコンや通信チップが入っている。欧州製だ。そのわきに暗号化チップが存在する。暗号化チップは中国の国民技術(Nationz Technologies)製で、メモリも中国製。詳細は有償のテカナリエレポートで解析結果を報告している(チップ開封と解析まで行っている)。

 図2は、2017年にIntelから発売された機械学習用のUSBスティック「Neural Compute Stick」(右)と2018年に機能向上した「Neural Compute Stick 2」の筐体の様子である。前者は「Made In USA」、後者は「Made In China」と明確に情報が書き込まれている。実際、Intelのニューラルコンピューティングチップを活用するのは中国のDJIを筆頭に中国メーカーが多い。第1世代は米国製だが、第2世代は製造が中国に切り替わっている。

図2:2018年に発売された「Neural Compute Stick」とNeural Compute Stick 2」の外観 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 このような事例がIntelだけでなく、他のメーカーでも増えている。

 図3は通信関係の例である。LTE-MやNB(Narrow Band)-IoTの通信モジュールや、BluetoothやWi-Fiを組み込んだ通信機器が増え続けている。全てを入手して分解して確認することはできないが、代表的なものはできる限り分解している。

図3:IoT機器関連向けの通信モジュール 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 メインの通信チップはQualcommやMediaTek、Nordic Semiconductor、Cypress Semiconductorなど欧米台湾などのチップが多い。しかし、徐々に中国のメモリチップやパワーアンプが組み合わされるケースが増えている。増えているというよりも、明確にポジションを築いているように見える。

 最新スマートフォンなどに搭載される高速で大容量なメモリはSamsung Electronics、 Micron Technolgy、SK hynix、東芝メモリが依然としてほとんどだが、LTE-M/NB-IoT対応の機器に標準搭載されているメモリは中国製も多い。

 図4は、日本がかつて得意とした分野の一例である。今や市場はほとんど小さいとはいえ愛用者や一定のユーザーが存在するラジオだ。内部は中国製のチューナー、中国製のアンプチップで構成されている。

図4:日本でごく一般的に売られているラジオにも、中国の半導体が採用されている 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 このように、見えないところに、確実に中国半導体は入り込んでいる。ローテク、ハイテクなどは関係ない。こうした中、2019年には、次世代の本命技術の一つである5Gの商用サービスがいよいよ始まる。弊社も、5G製品は片っ端から分解していく予定だ。

 今後も、弊社はローテク、ハイテク、新旧の括りなく、ジャンジャン分解して、見えないものを可視化し、分析していく(幸いなことに、手伝ってくださるメンバーも増えており、データを豊富に持つデータバンクとも連携しています!)

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


⇒「製品分解で探るアジアの新トレンド」連載バックナンバー

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