筆者は、米国がHuaweiを恐れているのだと考えている。その米国の恐怖とは何か?
中国は、約14億人の中国人と中国国籍の企業に、合法的にスパイ行為を行わせることができる法律「国家情報法」を2017年6月28日に成立させた。
Huaweiは、2017年の通信基地局の売上高シェア1位(27.9%)である(図1)。HuaweiとZTE合計の売上高シェアは約40%であり、中国製通信基地局は価格が安いことを考慮すると、出荷台数シェアは70%位になるかもしれない。
今のところ、Huaweiは中国政府に反発しているが、もし、中国政府の軍門に下ったら、米国にとって悪夢のような未来が待ち受けている。Huaweiが通信基地局に“余計なもの”を仕掛けたら、米企業の技術は盗み放題になる可能性があるからだ。
しかし、Huaweiが中国政府に屈しない限り、米国の悪夢は現実にならない。では、米国がHuaweiを攻撃する本当の理由は何か?
Huaweiの地域別売上高を見てみると、南北アメリカは低調だが、中国、欧州、中東、アフリカの売上高が急拡大している(図2)。また、Huawei の売上高の約半分を通信基地局ビジネスが占めている。さらに、Huaweiの通信基地局の売上高シェア(27.9%)から計算すると、世界の通信基地局の約50%をHuaweiが占めていると考えてもおかしくない。
つまり、世界の通信基地局は、中国が、というよりHuaweiが制してしまったのだ。
これまで、ハイテク技術では、米国が世界の覇権を握ってきた。半導体、PC、Windows、インターネット、スマホ、Web検索、SNS、Amazonの通販、クラウドなど、数え上げればきりがない。
しかし、米国は、ここにきて一つ大きな間違いを犯した。IoTやAIが主役となる時代は、データが価値を持つ。そのビッグデータのやり取りは、必ず、通信基地局を経由する。特に、次世代高速通信5Gは、世界のインフラとなり、人類の生活も企業活動も、根底から変えてしまう可能性が高い。
“Data is new oil“.
かつて、人類は原油を巡って戦争を起こした。ところが、現代は、データを巡って世界が攻防を繰り広げている。そのデータ戦の一端を制したのが、中国のHuaweiである(中国が制したのではなく、Huaweiが制したのである)。恐らく、米国にとっては、Huaweiが中国企業であることが、大問題なのだ。
したがって、米国は、Huaweiを攻撃する材料さえあれば、徹底的に攻撃する。Huaweiが本当に米国の技術を盗んだかどうかは、どうでもいい(のではないか)。とにかく米国は、気が付かない間に、世界の通信基地局の陣取り合戦に勝利してしまったHuaweiをぶっ潰したいのである(と思う)。
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