東京理科大学らの研究グループは、有機半導体エピタキシー技術を用いて作製した有機半導体pn接合において、電子と正孔の両方が「波動」性を示すことを実証した。
東京理科大学は2019年3月、有機半導体エピタキシー技術を用いて作製した有機半導体pn接合において、電子と正孔の両方が「波動」性を示すことを実証したと発表した。この技術を用いると、光電変換効率の高い有機太陽電池の開発が可能になるという。
今回の成果は、東京理科大学理工学部先端化学科の中山泰生講師や自然科学研究機構分子科学研究所、千葉大学、高輝度光科学研究センター、産業技術総合研究所との共同研究によるものである。
有機太陽電池は、分子が太陽光を吸収してできる励起子が素子の中を移動し、pn接合と呼ばれる、ドナー分子(p型有機半導体)とアクセプター分子(n型有機半導体)の界面に達すると、電子と正孔に分かれてキャリアを発生させる。自由に動くことができるキャリアを各電極へ輸送することで発電する仕組みだ。ただ、シリコン太陽電池などに比べ光電変換効率が低いという課題があった。
こうした中で、ドナー分子とアクセプター分子の両方が規則的に整列した結晶を作製した上で、電子を波動的な動きやすい状態にできれば、実用性の高い有機太陽電池の開発につながる可能性があるとみられていた。
そこで研究グループは今回、分子線エピタキシー(MBE)法を有機半導体材料に適用し、ドナー分子(ペンタセン)の単結晶上に直接、アクセプター分子(フッ化ペンタセン)を規則的に配列させた有機pn接合を作製することに成功した。この結晶性pn接合を角度分解紫外光電子分光法により計測した。この結果、アクセプター分子の結晶薄膜において、電子が波動的な性質を示す価電子バンドのエネルギー分散を確認した。
研究グループによれば、さまざまな材料で波動的な性質を示す有機半導体pn接合の作製技術を確立すれば、効率の高い新タイプの有機太陽電池を実現できるとみている。
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