今回は次世代メモリの理想と現実の違いを述べるとともに、コンピュータのメモリ階層における次世代メモリの立ち位置をご説明する。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
本シリーズの前回では、現行世代のメモリ技術における問題点を指摘することで、次世代メモリ(New Memory)の必要性を論じた。今回は次世代メモリの理想と現実の違いを述べるとともに、コンピュータのメモリ階層における次世代メモリの立ち位置をご説明する。
次世代メモリの理想の姿はしばしば、「ユニバーサルメモリ」として論じられる。「ユニバーサルメモリ」は、それだけで多くの半導体メモリを置き換えられるメモリとして定義される。メモリをROMとRAMで構成しているシステムでは、ユニバーサルメモリに置き換えることで、ROMとRAMの区分けがなくなる。アドレス空間でプログラム領域や作業領域などを、自由に割り当てられるようになる。
「ユニバーサルメモリ」に要求される「理想的な仕様」は以下のようなものだ。「DRAMと同じくらい高速で、不揮発性を備えており、書き換え回数は無限大、記憶容量当たりのコストはNANDフラッシュメモリよりも低い」。この仕様は素晴らしい「夢」ではあるが、現実的ではない。
現実の「ユニバーサルメモリ」は、さまざまなトレードオフをバランス良く組み合わせることで成立する。実際のコンピュータシステムが要求する性能を現在のメモリとストレージで満たせていない領域に、次世代メモリの存在価値がある。
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