次世代メモリの「理想と現実」 : 福田昭のストレージ通信(141) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(4) (2/2 ページ)
コンピュータシステムを構成するメモリとストレージを、アクセスにおける遅延時間(レイテンシ)と関連付けて考えよう。さまざまなメモリとストレージの遅延時間は、1桁あるいは2桁の差で配置されていることが望ましい。遅延時間が短いメモリ/ストレージは記憶密度が低く、記憶容量当たりのコストが高い。遅延時間が長いメモリ/ストレージは記憶密度が高く、記憶容量当たりのコストが低い。
最も遅延時間の短いメモリはプロセッサが内蔵するSRAMである。遅延時間は数ナノ秒と短い。次に来るのがプロセッサに外付けするDRAMである。遅延時間は数十ナノ秒とかなり短い。ここまでがメモリの領域である。
その次に来るのは、NANDフラッシュメモリである。厳密にはNANDフラッシュメモリを内蔵するストレージ(SSDやUSBメモリなど)を指す。遅延時間は数百マイクロ秒と、一気に伸びる。DRAMとNANDフラッシュメモリで遅延時間のギャップは、4桁もある。
このことがどのような意味を持つのか。システムがDRAMにアクセスしている状態から、NANDフラッシュメモリにアクセスする状態に切り替わった瞬間に、システムの性能が大幅に低下する。データを読み込むまでの待ち時間が、大幅に伸びるからだ。
コンピュータのメモリ/ストレージと遅延時間(レイテンシ)の関係。従来のシステム構成。出典:MKW Venture Consulting, LLC
そこでDRAMよりも遅いがNANDフラッシュメモリよりも速いメモリ/ストレージを組み込むことで、システムの性能低下を防ぐ。あるいは総合性能を向上させる。次世代メモリの多くは、この領域を狙って開発されている。
コンピュータのメモリ/ストレージと遅延時間(レイテンシ)の関係。近い将来のシステム構成。出典:MKW Venture Consulting, LLC
DRAMとNANDフラッシュメモリの間に存在する遅延時間のギャップを埋める方法は、次世代メモリとは限らない。現行世代のメモリ技術を改良することで、ギャップを埋めようとする試みも存在する。例えばDRAMとNANDフラッシュメモリを混載したメモリモジュール(DIMM)や、高速なNANDフラッシュメモリを内蔵するSSDなどである。次世代メモリは、こういったメモリ/ストレージと競争しなければならない。
(次回に続く )
DRAMのスケーリング論
今回はDRAMのスケーリングと、次世代メモリへのニーズが高まっている背景を取り上げる。
NANDフラッシュメモリのスケーリング論
2018年8月に開催された「フラッシュメモリサミット」から、半導体メモリの技術動向に関する講演の内容を紹介するシリーズ。今回は、次世代メモリが期待される3つの理由のうち、スケーリング(微細化または高密度化)について解説する。
現行世代メモリと次世代メモリの違い
フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」。最近のFMS(2018年8月に開催)で公表された情報の1つに、半導体市場調査会社MKW Venture Consulting, LLCでアナリストを務めるMark Webb氏が「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで述べた、半導体メモリの技術動向に関する講演がある。その内容が興味深かったので、講演の概要をシリーズでお届けする。
DRAMとNANDフラッシュのベンダー別シェア
2018年に開催された「フラッシュメモリサミット」では、さまざまな講演が行われた。今回から始まるシリーズでは、半導体メモリ市場を分析した講演「Flash Market Update 2018」の内容を紹介する。
膨張を続けるデジタルデータをNANDフラッシュが貯蔵
2018年5月に開催された「IMW(International Memory Workshop)」のショートコースで行われた技術講座から、「Materials, Processes, Equipment Perspectives of 3D NAND Technology and Its Scaling(3D NAND技術とそのスケーリングに関する材料とプロセス、製造装置の展望)」の概要をシリーズでお届けする。
記憶容量と書き換え回数から最適な埋め込みメモリを選択
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」で行われたセミナー「Embedded MRAM Technology for IoT & Automotive(IoTと自動車に向けた埋め込みMRAM技術)」の概要を今回からシリーズで紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.