VLSIシンポジウム 2019 開催概要を発表:京都で2019年6月9〜14日開催(2/3 ページ)
今回のVLSIシンポジウムの開催テーマは「半導体の限りなき挑戦で、より強く結びついた世界を実現」。VLSIシンポジウム委員会委員長を務める黒田忠広氏は「VLSIシンポジウムは、日米半導体摩擦の中で、いかなる状況でも科学者、技術者はフランクに話し合うべきという考えで始まった(技術シンポジウムが1981年に、回路シンポジウムは1987年にスタート)。そして、最近では米中貿易摩擦などが起こり、当初からのVLSIシンポジウムの開催意義は深まり、重要性は増してきている。同時に、VLSIシンポジウムは、ISSCC、IEDMといった国際学会に比べて、より将来に向けた新しいアイデアが発表、議論される場。『ムーアの法則』に代表されるシンプルな技術進化の時代がやがて終わろうとしている中で、技術と回路の双方を扱うVLSIシンポジウムの価値は急上昇している。こうした半導体、LSIに関する最高峰の国際学会を日本が主導して運営できるのは、先人たちが残してくれたおかげであり、今後のさらなる発展のために、新たな挑戦を続けていく」とした。
なお、今回の新たな試みとして、例年、開催初日となる月曜日の前日(日曜日)にワークショップを実施する。ワークショップでは、本会議で議論されないニッチな技術領域にスポットを当てた議論を実施する予定で、今回は「原子層堆積、原子層エッチングと選択的パターニング」「2次元材料とその応用」「不純物活性の低温化」という3つのテーマを実施する。
記者説明会では、VLSI技術、VLSI回路の両シンポジウムの注目論文も紹介された。
- メモリ内の強化学習システムのための強誘電トンネル接合(東芝、東芝メモリ)
- 新開発のナノスケールの強誘電トンネル接合メモリスタをアレイ状に並べ、メモリ内強化学習システムを実現した。
- カーボンナノチューブ回路を用いた3Dイメージングシステム(Massachusetts Institute of Technology)
- シリコンフォトダイオード層上に2層のCMOSカーボンナノチューブFET(CNFET)による演算層を集積したイメージセンサーを開発。CNFETを用いた回路で、得られた画像の演算を行いエッジ検出をリアルタイムで実現できる。
VLSI技術シンポジウム注目論文の概要(1) (クリックで拡大) 出典:VLSIシンポジウム委員会
左=メモリ内の強化学習システムのための強誘電トンネル接合
右=カーボンナノチューブ回路を用いた3Dイメージングシステム
- 22FFL FinFETに搭載された混載RRAM(Intel)
- 22nm モバイル向け高速低消費電力プロセス(=22FFL)によるFinFET上にRRAM(抵抗変化型メモリ)を混載することに成功した。
- GNOIを用いた絶縁耐圧の高いGaN HEMT(Singapore-MIT Alliance for Research and Technologyなど)
- 複数回の基板貼り合わせ技術により、GaN(窒化ガリウム)オンインシュレータ(GNIO)オンシリコンウエハー上にHEMT(高電子移動度トランジスタ)を作成。GaNオンシリコン技術で、これまで難しかった耐圧を高めることに成功。最高2200Vというオフ耐圧(BVoff)および、1.87GW/cm2の高い性能指数を達成した。
- 7nm世代技術のEUVによる信頼性改善(Samsung Electronics)
- EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を用いた7nm FinFET技術の信頼性を改善。改善したEUVによる単一露光技術より、多重露光を用いる従来技術よりも大幅に信頼性ばらつきを改善できたことを示す。
- 20nm世代以降のSTT-MRAM技術(東北大学、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業)
- 4重界面構造の磁気トンネル接合(MTJ)技術を実現。従来の2重界面MTJ技術と比べ、熱安定性とスイッチング効率を1.5倍から2倍改善した。
VLSI技術シンポジウム注目論文の概要(2) (クリックで拡大) 出典:VLSIシンポジウム委員会
左=GNOIを用いた絶縁耐圧の高いGaN HEMT
右=7nm世代技術のEUVによる信頼性改善
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