同社のパワー半導体事業の展開において、特に期待をしているのが電気自動車(EV)向けの需要だといい、川野氏は、「EV市場では非常に多くの引き合いをいただいている。それだけでもクリーンルームを建てられるほど大きな需要だ」と説明。主体となっているのが中国市場であることから、「変動要因を見ながら投資や開発方針を決める」としながらも、「スピードも速いので、乗り遅れないように進めていく」と付け加えた。
また、各社が進めるウエハーの大口径化については、「パワーデバイスの場合、少量多品種になるものが多く、いろいろな課題が出るので、バランスを考えている」と説明。「できるだけ早い時期に(ウエハー大口径化投資の)検討を終え、次の段階に進めていきたい」と述べるに止めた。
川野氏は、SiCパワーデバイスについて、高耐圧、機器の軽量化に優れたデバイスであり、徐々に応用用途が広がっていることから、2030年には指数関数的に市場規模が拡大するという予測を示す。その上で、現在は東芝グループ内向け、鉄道用に供給しながら、6インチウエハーラインで生産能力を増強していることを説明。東京メトロ丸ノ内線の新型車両に、All-SiC素子を搭載したインバーター装置を導入した例や、1200〜3300V耐圧のSiC-MOSFETによる産業向けAll-SiCモジュールの開発、展開計画を紹介した。
一方で、川野氏は、SiCには材料の欠陥が多く少数キャリア動作に課題がある点も挙げた。「複数の材料メーカーとタイアップしながら進めており、いろいろな材料の提供を受けて実際にデバイスにしてフィードバックしていき、欠陥を低減しながら性能を高めている」(川野氏)と述べた。
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