東芝デバイス&ストレージとジャパンセミコンダクターは、車載用アナログパワーICなどの用途に向け、高温環境下でも高い信頼性を実現可能な、LDMOSプロセス技術を開発した。
東芝デバイス&ストレージとジャパンセミコンダクターは2019年5月、高温環境下でも高い信頼性を実現可能な、車載用アナログパワーIC向けプロセス技術を開発したと発表した。LDMOS(Lateral Double Diffused MOS)製造プロセスの製法変更などにより、150℃以上の高温下における寿命を従来の10倍以上に改善できるという。
NチャネルLDMOS技術を用いたパワーICは、産業機器や民生機器のモーター制御などに用いられている。最近では車載分野への応用も期待されている。ところが、従来のLDMOS製造プロセスだと、シリコンウエハーに不純物を注入して拡散層を作製する工程で、シリコンの結晶性が乱れる。これが初期リーク電流の増加につながり、歩留まりが低下していた。また、車載用途など、厳しい温度環境で長時間使用すると、リーク電流が増加するという課題(HTRB変動)もあった。
そこで両社は、LDMOSの製法を変更して、初期リーク電流の増加を抑えた。従来は、HDP−CVD(High Density Plasma assisted Chemical Vapor Deposition)製法を用いて、LDMOS末端部のSTI(Shallow Trench Isolation)を埋め込んでいた。今回は、シリコンに対するSTIからの応力が小さく、不純物濃度が高くても結晶性が乱れにくい、SA−CVD(Sub‐atmospheric Pressure Chemical Vapor Deposition)製法を採用した。これにより、初期リーク電流の増加を抑制することが可能となった。
一方、HTRB変動に関しては、LDMOS末端部の構造に原因があることを突き止めた。HTRB変動は、イオン注入でSTI領域とシリコン領域の境界に発生した欠陥が、その後の熱処理で水素イオンと結合して見えなくなる。ところが、高温下で長時間使用することによって水素イオンが欠陥から外れてリーク電流が増加することが分かった。
そこで今回、Si領域とSTI領域の境界面をゲートポリで覆った。これにより、結晶欠陥の発生を抑え、HTRB変動の特性を改善できたという。両社は新開発のプロセス技術を用いた車載向けアナログパワーIC製品を、2019年7月より量産する予定である。
なお、東芝デバイス&ストレージは、現行のLDMOSに比べてオン抵抗を半分にした第4世代LDMOSの開発にも取り組んでいる。
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