5Gスマートフォンの出荷台数については、一定の割合で増えるものの、2023年時点で全体の約3割となる870万台になるとみている。「最初に発売される5G端末は、かなり高額になるとわれわれはみている。さらに、肝心の5G対応アプリケーションもほとんど出てこないことから、5G端末への乗り換えがなかなか進まないだろう」(小野氏)
IDC JapanでPC, 携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストを務める菅原啓氏も、「2023年時点で、5G端末は主流には程遠い」と付け加える。「まだまだ主流は4G端末で、5G端末が多数派になってくるのは2025年から2026年ごろだろう」(菅原氏)
5G端末のシェアは、日本だけでなく、中国や韓国、欧州でもほぼ3割程度にとどまるとみられている。一方で、米国では高い伸びが期待されている。
OS別の出荷台数については、ベンダーが多数存在することからAndroid系端末は伸び悩むと菅原氏は分析する。「iOS端末については、Appleが2020年に『iPhone』の5G対応モデルを投入するとみている。iPhoneは年間で1500万〜1600万台が出荷されている。5G対応機種の出荷数は、その半分もいかないのではないかと予測している」(同氏)
5G端末の価格については、菅原氏は予想金額は明らかにしなかったが、「相当高額になるだろう」と述べた。「5G端末は、AndroidにしてもiOSにしても、“ハイエンド中のハイエンド”になる。10万円を大きく超えてくるだろう」(同氏)
契約数については、2023年時点で全体の13.5%となる3300万回線と予測する。料金プランも高額となる見込みだが、先行する海外キャリア同様、スマートフォン向けは容量無制限プランで提供を開始する可能性もあると小野氏は述べた。なお、5G向けプランの価格設定は、諸外国では100〜150米ドルのようだ。
小野氏は、ITベンダーや通信事業者、サービス事業者などへの提言として、「民生分野での5G普及に向けては過度な期待は抱かずに、少し先に来るであろうイノベーションに備えるべきだ。一方で、普及させるにはマス層に到達しないと意味がないので、サービスの内容や適正価格について、5G端末のアーリーアダプターやコンテンツ開発事業者を巻き込んだマーケティングが不可欠である」と述べる。
さらに、「産業分野での普及に向けては共創による取り組みが重要になる。特に、システム開発においては、DXではスピード感を重視しつつ、デジタルの流儀にのっとって、アジャイル開発やデザイン思考などに取り組むべきだろう。5Gの本質的な価値を享受できるのは2025年以降になる見込みだが、DXは待ってくれない。ニーズはあるのか、キラーアプリケーションは何なのかということを議論し過ぎると、投資を先送りしがちになるが、諸外国との競争を考慮すればまずは始めてみることが重要だ。いろいろなトライアルを進めていってほしい」と続けた。
菅原氏は、「移動通信の歴史を振り返ると、4Gは約10年にわたり使われている。4Gのフル規格であるLTE-Advancedの4Gが登場したのは2015年以降で、それまでは『3.9G』という位置付けで何とかやっていたという経緯がある。5Gについても同様で、今後数年間は5Gが普及する初期段階になるだろう。ただし、その先には、日常を激変するようなアプリケーションが待っていると考えられる。そのためには、個々のデバイスの幅広い普及が、まずは必要になる」と語った。
米国は、中国との貿易戦争で特にHuaweiを狙い撃ちにし、Huaweiに5Gでの覇権を握らせまいとしている。Huawei抜きで5Gの普及加速が現実的に可能なのか。IDC Japanの一般的な見解としては、やはり、5Gへの移行計画に影響が出るのは必至のようだ。菅原氏は「通信業界でもサプライチェーンは複雑になっていて、一つの事象だけで判断できるものではない。米中貿易戦争でも水面下でさまざまな動きがあり、(Huawei外しの)影響を評価するだけの情報が不足しているというのが現状だ」と語った。
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