提供開始からまもなく、1年を迎えるCDKは、ISP用ファームウェアの受託開発を手掛ける独立系設計企業(Independent Design House/以下、IDH)やカメラモジュールメーカーなど“イメージングのプロフェッショナル”を中心に利用が広がっているという。同社営業部でプロダクトマネージャを務める桑山克己氏は「GUIツールで、イメージチューニングが簡単に行えるものの、イメージングの知識は必要であり、イメージングのプロが、主な競争領域であるイメージングに集中できるツールとしてCDKを活用している」と分析する。
ただ同時に「IDHやカメラモジュールメーカーにファームウェア開発を依頼するセットメーカーのCDK利用も広がり、CDKユーザーの3割程度を占める」(桑山氏)とする。なぜ、直接、ファームウェア開発を行わないセットメーカーが、CDKを利用するのか。「IDHが作成したバイナリファイルを、セットメーカー側で少しチューニングし、手元にある実機に実装し画質を確認するといった形で利用されている。IDHとセットメーカーは、同じ画像を見ながら会話でき、お互いの意図を簡単に伝えられる。いわば、CDKがコミュニケーションツールとして活用されている」(桑山氏)とする。
ザインエレクトロニクスでは、一層のCDKの利用拡大を目指し、新たな取り組みを開始した。それが、CDKをコアにしたエコシステム作りだ。
CDKの利用を広げるには、CDKで“できること”を増やす必要がある。CDKは、誰でもファームウェア開発をコンセプトにしているために、高度なイメージングの知識がなければ扱いが難しい設定項目や機能を、あえて開放しておらず、より特殊なこと、専門的なことがやりにくい場合があるという課題がある。
そうした中で、「イメージングのプロであるIDHなどから制約を開放してほしいという要望が多く寄せられた。そこで、高度な知識を持つユーザーに対し制約を開放し、より専門的な機能を開発できるようにしている」(開発部イメージングシステムソリューショングループマネージャー 喜利学氏)という。そして、「こうしたIDHには、制約を開放すると同時にパートナーシップを結び、CDK上で開発した専門的な機能を、CDKのオプションとして、他のユーザーに販売、提供してもらうようお願いしている」(喜利氏)とする。
「当社としても、より専門的な機能や特殊な機能を実現できるよう、CDKの改良を進めているが、1社では限界がある。カメラ機能を搭載するアプリケーションは今後、ますます増え、開発しなければならないアプリケーションごとに特化した機能は爆発的に増える。そうなれば、なおさら1社で全てを開発、サポートしていくのは不可能になる。だからこそ、イメージングのプロであるIDHとともに、アプリケーション特化型機能を開発していきたい」とその狙いを説明する。
現在、パートナーシップを結ぶIDHは、国内外5社を超え、まもなく、各パートナーの開発成果をCDKのオプション(=CAO[Camera Application Option])としてCDKユーザーへの提供が始まる。CAOの提供形態については、「有償、無償の両方があり、ライセンスも当社から提供するケースと、IDHから提供するケースがともにあるだろう」(桑山氏)とする。同社では、2019年7月17〜19日に開催される展示会「第2回 4K・8K映像技術展」に出展し、まもなく提供開始予定のPDAF機能*)を実現するCAOなどのデモを紹介する予定だ。
*)PDAF機能(フェーズ・ディフェクト・オートフォーカス機能):従来のオートフォーカス(AF)機能に比べ、高速にピントを合わすことができる機能で像面位相差AF機能とも呼ばれる。このPDAF機能に対応したCMOSイメージセンサーが複数登場しているが、「PDAF機能を使いこなすためのファームウェアは、各イメージセンサーと高度な合わせ込みが必要で、開発負担がかなり大きい」(喜利氏)という。
桑山氏は「いずれは、CDKがいろいろなカメラのファームウェアの共通基盤になり、カメラにおける“Linux”のような存在にしたいと考えている。そして、カメラ開発の在り方を変革し、“カメラだらけの世界”の実現に貢献したい」としている。
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