SamsungのGalaxy S10にはQualcommのプロセッサ「Snapdragonシリーズ」を用いたものとExynosシリーズを用いた2つのプラットフォームが存在する。図1ではExynosシリーズを用いたものを掲載した。図2はQualcommの2019年新プロセッサ「Snapdragon855」を用いるXiaomiの「Mi9」の様子である。
Sanapdragon855はすでにMi9以外にも多くの製品に活用されている巨大プラットフォームである。Samsung Galaxy S10もその一例だ(Qualcommモデル)。また身近なところでは、ソニーの最新スマートフォン「Xperia 1」にも採用されている。図2のように、Snapdragon 855もPOP実装を用い、下側のチップがプロセッサ、上側のチップがLPDDR4Xだ。Exynosシリーズと同じ構造である。チップはTSMCの7nmプロセスで製造されている。内部はほぼQualcommオリジナルの機能で構成される。CPUはArmをベースとしたQualcommオリジナルのKryo485。3階層構造はSamsungと同じである(3階層は超高速、高速、低消費電力低速でアプリケーションに応じて速度と電力を使い分ける構造だ)。GPUもQualcommオリジナルのAdreno640、DSP、AIアクセラレータなどもQualcomm独自のものが搭載されている。さらにカメラISPやGNSS、Wi-Fiなどのデジタル回路も1シリコンに収められている。LTEモデムもSamsungと同じく、LTE Cat.20が搭載される。
若干の差はあるが、内部機能は、図1のSamsungのExynos9820と同じ。3階層CPU、LTE Cat.20は共通である。2018年後半に先行したApple、Huaweiもほぼ同等性能を実現できている(ただしAppleはLTE Cat.16までしか実装しておらず、仕様面では1ランク下になっている)
こうした高度なプロセッサをほぼ毎年リリースし、スマートフォンの発売スケジュールに合わせて、きっちりと量産化にまでこぎつけるのは今や、4社だけである。Apple、Huawei、Samsung、Qualcommの4社だ。この4社に若干遅れて、ミドルハイ市場向けのMediaTekが続く。
図3は、Samsung、Qualcommの4チップを開封した様子である。写真は若干ぼかしを入れてある(テカナリエレポートでは鮮明なものを扱っている)。
図3左側は2018年モデル向けのSamsungの10nm世代プロセッサ「Exynos9810」とQualcommの10nm世代プロセッサ「Snapdragon845」の様子である。ともに2018年の多くのスマートフォンに採用されたほぼ同等の機能を持つチップである。しかしながらチップサイズはおおよそ24%もQualcommの方が小さい。小さいということは、1枚のウエハーから取得できる数も多く、それだけ製造コストも抑えることができるわけだ。
同じプロセス技術を用いながら、ほぼ同じ機能を24%も小さい面積で実現できるQualcommの設計が際立っている。QualcommはCPUやGPU、DSPなどをほぼ自前化し、ソフトウェアとハードウェアの最適性を作り込んでくる。そのためハードウェアで処理すべき内容とソフトウェアで処理すべき内容を分け、ハードウェアを最小化することで歴代のSnapdragonでも他社に比べて、ひと回り、ないし、ふた回り小さいという特長がある。図3右側は2019年版プロセッサで上側がSamsungのExynos9820、下側がSnapdragon855だ。Exynosは8nmプロセス、Snapdragonは7nmプロセスという差はあるが、2つのチップ面積差は約39%。Snapdragon855はExynos9820に比べて、おおよそ3分の2の面積で同等性能を発揮していることになる。面積差はそのまま、コストにも直結する。さらに面積が小さいことでウエハーの欠陥に遭遇する割合も低減できるので、歩留まりもQualcommの方が良いものになる。
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