東京大学は、盗聴を監視する新たな手法を考案し、既存技術でも量子暗号の到達距離を従来の約2倍に延ばせることを証明した。
東京大学は2019年7月、盗聴を監視する新たな手法を考案し、既存技術でも量子暗号の到達距離を従来の約2倍に延ばせることを証明したと発表した。
量子暗号は、強固なセキュリティ通信を可能とする技術だが、既存の光通信技術だけだと、通信距離は最大250km程度であった。このため、長距離通信を可能にする量子暗号方式「ツインフィールド方式」などが提案されてきた。ところが、通信を行う2者の間にある光子検出装置がサイバー攻撃を受けた場合には、効率よく監視し実用レベルでセキュリティを確保する方法が見つからなかったという。
東京大学大学院工学系研究科の前田健人氏らによる研究チームは今回、盗聴の痕跡を効率よく調べる方法を考案した。具体的には、レーザー光源だけで作る2種類の光パルスを用意する。これを光ファイバーに通し、収集した2種類のデータを引き算するだけで、盗聴の痕跡が浮かび上がり、あらゆる盗聴攻撃を見逃さず監視することが可能となった。これに対し、従来のツインフィールド方式は、「シュレーディンガーの猫状態」と呼ばれる特殊な光を用いて、盗聴を検出する必要があった。
今回の研究成果について研究チームは、「既存の技術で量子暗号の到達距離を最大500kmまで延ばせることを証明した。近距離用の量子暗号方式の低コスト化にも寄与する」とみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.