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小型多画素のサーマルダイオード赤外線センサー0.1℃単位で温度を分析

三菱電機は、サーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR(メルダー)」を開発、2019年11月より発売する。多画素化と高い温度分解能を実現した。暗所における人の行動検知などの用途に向ける。

» 2019年08月07日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

チップスケールパッケージで形状を約80%縮小

MelDIR(メルダー)の外観

 三菱電機は2019年8月6日、サーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR(メルダー)」を開発し、2019年11月より発売すると発表した。多画素化と高い温度分解能を実現した。暗所における人の行動検知などの用途に向ける。

 MelDIRは、地球観測衛星「だいち2号」に搭載されたサーマルダイオード赤外線センサー技術をベースに開発、防犯機器や空調機器など民生機器に向けて製品化した。赤外線センサーは、可視光で検知できない環境であっても、物体が発する赤外線を受けて識別することができる。

 例えば、暗い場所や逆光など外乱光の影響を受ける場所、煙などが充満し散乱の影響を受ける場所などだ。イメージセンサーとは異なり被写体のプライバシーを守れるのも、赤外線センサーの特長である。

赤外線センサーによる熱画像のイメージ 出典:三菱電機

 MelDIRの第一弾となる「MIR8032A1」は、画素数が80×32画素、温度分解能は100mKであり0.1℃単位の温度分析を可能にした。防犯や見守りなどの用途で一般的に用いられるサーモパイル(16×16画素、500mK)に比べて画素数は10倍、温度分解能は5倍である。

 単位面積当たりの画素数を増やすため同社は、独自の画素構造を採用している。半導体プロセスを用いて画素部に支持脚を形成することで細線化し、画素サイズを小さくした。また、サーマルダイオードと近い位置に高性能アンプを作り込むことで、電磁ノイズの影響による精度の劣化を抑制している。

 民生機器用途に向けてパッケージも工夫した。ウエハー一括形成により真空封止を行うチップスケールパッケージ技術を用いている。外形寸法は19.5×13.5×9.5mmと極めて小さい。従来のセラミックパッケージ品に比べて製品サイズが約80%小さくなったという。

MelDIRの画素構造とチップスケールパッケージのイメージ 出典:三菱電機

 この他、MIR8032A1の動作電圧は3.3V、消費電流は最大50mAである。画角は78度×29度、検知可能な温度範囲は−5〜60℃となっており、通信インタフェースはSPIを用意した。サンプル価格(税別)は8000円。

 赤外線センサー市場は現在、既存の焦電センサーやサーモパイル製品を中心に100億円規模とみられている。この市場領域にMelDIRを投入することで、2022年には390億円規模に達すると予測する。同社は増分のほとんどをMelDIR製品で獲得したい考えである。

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