福島氏は、機械学習のシステム開発では「パラダイムシフトが起きている」と続ける。「従来のシステム開発は、手順をきちんと書くことでシステムの動作が決まるという演繹(えんえき)的な作り方だった。ところが機械学習のシステム開発は、データを与え、それを参考にしてルールを作るという帰納的な作り方になる。これまでとは違う、新しい開発方法論が必要になる」(同氏)
こうした流れを受けて、AIシステムの安全性と信頼性を確保するための、新世代のソフトウェア工学が立ち上がっていると福島氏は述べる。「JSTでは『AIソフトウェア工学』と呼んでいる。他に、“ML工学”や“ソフトウェア 2.0”という言い方もされている」(同氏)
福島氏は、AIシステムの安全性と信頼性の確保においては、日本が競争力を得られるのではないかと期待している。「品質を確保するというところは、日本が得意な分野。実際に日本ではここ1〜2年で、多くの研究コミュニティーやコンソーシアムが発足するなど、動きが急速に活発化しており、世界的に見ても先行している」(同氏)
例えば2018年4月には、「機械学習工学研究会(MLSE)」や「AIプロダクト品質保証(QA4AI)コンソーシアム」が発足している。MLSEは、機械学習を用いたシステムの要件定義から設計、開発、運用まで、プロセス管理やテスト/品質保証の手法、プロジェクトマネジメントまで含めた包括的な取り組みを推進する。QA4AIコンソーシアムは、AI技術を用いた製品の品質保証について共通の指針を提供することを目指している。同コンソーシアムは、「AIプロダクト品質保証ガイドライン」を作成しており、2019年5月版がダウンロード可能になっている。
福島氏は、「AI技術の性能向上だけでなく、『人間中心のAI社会原則』を満たすための研究開発への取り組みが求められる」と強調した。
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