ルネサス エレクトロニクスは「electronica 2018」(2018年11月13〜16日、ドイツ・ミュンヘン)で、同社が提唱する、組み込み機器にAI(人工知能)を搭載する「e-AI」の訴求に力を入れた。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)はドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2018」(2018年11月13〜16日)で、同社が提唱する「e-AI(embedded AI)」の展示に力を入れた。
車載向けマイコン/SoC(System on Chip)という印象も強いルネサスだが、FA(Factory Automation)向けのマイコンや家電、スマートメーター向けのマイコンでトップシェアを持っている。ルネサスのインダストリアルソリューション事業本部 事業計画統括部でシニアディレクターを務める馬場光男氏は、「これらNo. 1のシェアを持つマイコンをてこに、エンドポイントのインテリジェンス化を目指す」と語る。
ルネサスは、エンドポイントのインテリジェンス化の実現と加速に向け、2つのアプローチを採る。それが、e-AIと「SOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)*)」だ。
*)関連記事:環境発電で“欠けていたピース”埋める、ルネサスのSOTB
e-AIは、文字通り組み込み機器にインテリジェンス、つまりAI(人工知能)を搭載するというコンセプトである。馬場氏は、「e-AIは基本的にOT(Operational Technology)の世界で使うためのもの。クラウドで学習しながら賢くなるITの世界のAIとは異なるものとして定義している」と述べる。
「誰も分からなかったようなことが、データを蓄積して解析することによって分かるようになるのがITのAIだとすると、OTのAIでは、やりたいことは決まっている」と馬場氏は述べる。例えば、装置の予知保全のために振動データをモニタリングしたい、といった具合だ。ただ、これまでは、振動データはあるものの、故障や不具合と判断するには、そのデータをどう解析すべきかが分からない、というのが課題だった。その判断(つまり推論)にe-AIを活用しようというのが、ルネサスが数年前から提唱してきたコンセプトだった。
e-AIのコンセプトに沿って、ルネサスは2017年から、「Caffe」や「TensorFlow」で学習した結果(推論モデル)をルネサス製のマイコン「RZファミリ」「RXファミリ」などに実装するためのツールを提供している。馬場氏によれば、これらのツールは既に19カ国、230社がダウンロードしているという。
馬場氏は、「ITのAIでは、消費電力(発熱)を犠牲にしてもプロセッサの性能が求められている。一方でOT、つまりエンドポイントは、性能よりも消費電力とサイズが最優先される世界だ。だが当社は、性能と電力効率を両立できる領域を狙っていく」と語る。
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