Nano Cap LDOをこれらの従来品と比較すると、ソリューション1では競合品の電圧変動量が15.6%なのに対し、Nano Cap LDOは3.6%に、ソリューション2では競合品の電圧変動量が24.6%なのに対してNano Cap LDOは4.6%と、どちらも±5%以内に収まる結果となった。
LDOにおいて出力コンデンサーは電圧の変動を抑える役割を果たし、コンデンサーの容量が大きければ大きいほど、その変動を抑えることができる。小型(=小容量)のコンデンサーを使うと容量保持ができなくなり、電圧変動が大きくなってしまう。
そのため、Nano Cap LDOの開発では、いかに高速に、正確に電圧変動を補正できるかが課題であった。そこでロームは、DC-DCコンバーター(スイッチングレギュレーター)の電流モード制御に使われる技術をLDOに応用することで、高速な回路補正を実現したという。
つまり、DC-DCコンバーターの電流モードのフィードバックを、従来は電圧でフィードバックするLDOに応用し、電圧降下などを素早く補正する。「簡単なように聞こえるが、ここがわれわれの腕の見せどころ。LDOとDC-DCコンバーターを両方開発している当社のノウハウがあってこそ実現できた技術だ」とロームは強調する。
さらに、ソースフォロワ回路とLDOを融合させることで、マイコンの入力コンデンサーも不要にする“ソリューション2(安心・安全型)“を実現したという。
ターゲット市場としては自動車、産業機器、ウェアラブル機器、モバイル分野などを挙げる。自動車については、AEC Q100など、必要になる規格に準拠するよう対応していく。
「電源ICの設計でコンデンサーのサイズは、現在は3216(3.2×1.6mm)が主流となっているが、小型化へのニーズや製造量の増加といった背景から、1608(1.6×0.8mm)や1005(1.0×0.5mm)サイズへと移行するだろうと見ている。そのような小型コンデンサーは原理的に容量を上げることは難しい。そこでNano Cap技術が生きてくるだろう」(ローム)
ロームは今後、2019年12月中旬の商品化を目指してNano Cap LDOの開発を進める。サンプル出荷は2020年春〜夏に開始する予定だ。さらに、LDOの他、将来的にはオペアンプや内部電源など他のアナログIC/電源ICにもNano Cap技術を適用していくという。
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