Vicorの日本法人であるVicor KKは2019年10月10日に東京都内で記者説明会を開催し、日本市場での戦略や、絶縁型DC-DCコンバーターの新製品「DCM2322」を紹介した。
Vicorの日本法人であるVicor KKは2019年10月10日に東京都内で記者説明会を開催し、日本市場での戦略や、絶縁型DC-DCコンバーターの新製品「DCM2322」を紹介した。
説明会では、まず、2019年7月1日付でVicor KKの社長に就任した堂園雄羽(どうぞの・ゆうば)氏が登壇。Vicorの概要を語った。Vicorは1981年に設立された、パワーコンポーネントの専業メーカーだ。2018年の売上高は2億9100万米ドル(約320億円)。売上高の約16%を開発費として投資している。
ターゲット市場としては、もともと強みを持つ航空宇宙/防衛やコンピューティング、鉄道などに加え、データセンターや自動車分野への参入を強化していく。これは日本でも同じだ。堂園氏は「日本国内では、産業機器や半導体製造装置、鉄道といった分野で顧客と長期にわたる関係を構築しており、それらの従来分野は、しっかりと押さえていくことが重要だ」と述べる。
「それ以外、例えばデータセンター市場については、米国や中国に比べて日本(の市場規模)はどうなのか、という議論もあるかもしれないが、われわれとしては、データセンター向けプロセッサ開発などを含め、日本にもしっかりとしたマーケットが存在しているとみている。同分野における新しい潜在顧客とも、現在、関係を構築しているさなかだ。自動車分野についても時期が来れば詳しく発表したいと思っているが、48V電源への移行というトレンドを背景に、顧客との交渉を進めている」(堂園氏)
堂園氏によれば、これら新しい分野で交渉を進めている潜在顧客の多くは、Vicor製品の「小型さ」と「高い効率」に驚くという。Vicorは、サイズの低減とともに、効率や電力密度の向上を図ってきた。例えば、Vicorの電源コンポーネントの電力密度は2.0A/mm2と、「市場の平均である0.6A/mm2を大きく上回っている」(堂園氏)という。
今回発表したDCM2322も、小型化と、高い電力密度を実現した製品だ。従来品の「DCM3623」に比べて、より小型で小電力の製品となる。外形寸法は、従来品が38.7×22.8×7.2mmだが、DCM2322は24.8×22.8×7.2mmとなっている。これほど小型にもかかわらず、29W/cm3と高い電力密度を実現していることが特長だ。変換効率は最大で90.5%である。
Vicorでアプリケーションエンジニアを務めるJoseph Aguilar氏によれば、小型化できた主な要因はパッケージング技術や、Vicorが特許を保有しているトポロジーにあるという。「ゼロ電圧スイッチング(ZVS)やゼロ電流スイッチング(ZCS)によってスイッチング損失を低減し、それによってスイッチング周波数を高くでき、磁性部品を小型化できる」(同氏)
小型で電力密度が高いと、発熱が心配だが、これについては熱抵抗の低い樹脂モールドを使い、さらにヒートシンクを上下につけることで熱を逃がしやすくしているという。
DCM2322の入力電圧範囲は43〜154V、14〜72V、9〜50Vの3種類。それぞれについて、出力電圧が異なる複数の品種を用意している。主な用途としては、43〜154V品は鉄道、14〜72V品は通信、9〜50V品は軍事/防衛である。
DCM2322の価格については要問い合わせ。
Vicorは本社のある米国マサチューセッツ州アンドーバーに工場を保有していて、現在、2020年第3四半期の稼働開始を目指し、同工場の拡張を進めている。さらに、新しい工場の建設も計画していて、こちらは2022年に稼働を開始する予定だという。
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