今回は、2019年に話題を集めた製品を分解、チップ開封解析し、そこから見えてくるさまざまなことを報告したい。具体的には、「AirPods Pro」などのワイヤレスイヤフォンや「Galaxy Fold」「Pixel4」といったスマートフォン、ウェアラブル端末「Fitbit Versa2」などを取り上げる。【訂正あり】
2019年も残りわずか。年後半になっても話題の製品が目白押しだ。若干早いが2019年を振り返りつつ、話題の製品の分解および、チップ開封解析から見えるものを報告したい。具体的には、「AirPods Pro」などのワイヤレスイヤフォンや折り畳み型スマートフォン「Galaxy Fold」などを取り上げる。2019年に登場してイノベーションを起こしたものには車載機器関係や中国スマートフォンやカメラ関係などもあるが、今回はそれらについては触れないものとする。
図1は、2019年10月30日に発売されたAppleの新型ワイヤレスイヤフォンAirPods Proである。
筆者は発売前日、九州出張だったため朝一番機で羽田空港に戻り、その足で都内最大級の電気店に向かい、開店とほぼ同時に入手した。ただし一番乗りではなく、開店前から10人ほどがAirPods Proを入手するために並んでおり、8番目だった。購入後すぐに開封し、山手線の電車内でiPhoneとのペアリングを行った。電車内でのペアリングこそ、AirPods Proのすごさを体感できる。電車の中にはさまざまな音がある。装着と同時にそれらの音がほとんど消えて、一瞬にしてアクティブノイズキャンセリング機能を持つAirPods Proを体験できた。その後会社に戻り、分解を開始した。
内部は通常の基板とそこに搭載されるチップという構造ではなく、「H1 SIP」と呼ばれるシリコンインパッケージ(Silicon In Package/SIP)が採用されている。前方後円墳のような形状だ。このSIPだけでなく、電池の脇にはさらに複雑な形状をしたSIPが備わっている。AirPods Proの中には異形のSIPが2個入っているわけだ。SIPはネームミング通りシリコンを複数内部に持っているので、開封して確認しない限り、内部がどうなっているかは分からない。弊社では早速2種のSIPを、薬品を使って開封して、内部のチップを一つ一つ確認し、さらに接続関係や構造解析を実施した。AirPods Proの内部には3基ものMEMSマイクロフォンが組み込まれている。小さな筐体の中には上記SIP2個、マイクロフォン3基に加え、電池、Bluetooth用のアンテナ、スピーカー、タッチコントロール用スイッチ(実際にはForce Control)が入っている。図1の右上では内部を引き伸ばして配線がつながれている様子を掲載したが、実際には折りたたまれて筐体の内部に収まっている。
図2は薬品を使ってAirPods Proに入っている全チップを開封した様子である。センサーチップは1つのパッケージの中にMEMSチップとA-Dコンバーター(アナログからデジタルに変換)チップが入っている。そのためそれらのシリコンも一つ一つとしてカウントするとAirPods Proには、片耳あたり、24個ものチップが入っていることが判明した。両耳では48個!! である。
小さな筐体の中に24個ものシリコンが入っていること自体が驚きであるが、さらに受動素子などもカウントすれば100個を超える部品が入っているわけだ。ヘッドフォンを片っ端から分解している弊社にとっても常にAppleのAirPodsの分解は驚きの連続である。分解の難易度の高さでもほぼトップクラスである(最も難しいのはApple傘下のBeatsとHuaweiの製品)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.