「2019年度版 実装技術ロードマップ」を紹介するシリーズ。前回から「4.2 EMC対策部品」の概要を解説している。今回は、代表的なEMC対策部品の1つである「チップビーズ」を解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が発行した「2019年度版 実装技術ロードマップ」に関する完成報告会(2019年6月4日に東京で開催)と同ロードマップの概要をシリーズでご報告している。今回はその第39回である。
本シリーズの第31回から、第4章「電子部品」の概要を説明してきた。第4章「電子部品」は、「4.1 LCR部品」「4.2 EMC対策部品」「4.3 センサ」「4.4 コネクタ」「4.5 入出力デバイス」の5つの節に分かれる。前回から「4.2 EMC対策部品」の概要を紹介している。
前回は、EMC(Electro Magnetic Compatibility)とは何か、EMC対策部品とはどのような働きをするのか、などを解説した。今回からは、代表的なEMC対策部品について説明していく。具体的には、「チップビーズ」「コモンモードフィルタ」「積層バリスタ」「ESDサプレッサ」を順番に解説していこう。今回は「チップビーズ」の概要である。
チップビーズは、最も汎用的なEMC対策部品として知られる。「チップ型フェライトビーズインダクタ」、「チップフェライトビーズ」とも呼ばれる。始めはチップ型ではない、「フェライトビーズインダクタ」あるいは「フェライトビーズ」について説明しよう。
「フェライトビーズ」とは強磁性体のフェライトを管玉(ビーズ)状にしたEMC対策部品で、円筒形をしている。円筒の穴にリード線を通して使う。あるいはリード線を通した形で販売されている。フェライトビーズの周波数特性は独特で、周波数が高くなると急速にインピーダンスが大きくなるとともに、インピーダンスの主要な成分がリアクタンス成分から抵抗成分に変化する。このような周波数特性があるため、低周波信号はそのまま通過するのに対し、高周波信号は抵抗成分によって減衰する。
一般的に雑音は信号に比べると、高周波領域に広がっている。そこでフェライトビーズによって信号(雑音を含む)から高周波成分をカットすると、雑音を減らすことができる。
チップビーズあるいはチップフェライトビーズは、このフェライトビーズをチップ状の表面実装部品としたものである。配線を形成したフェライトのシートを積層して焼成することで、立体的なコイルを内部に形成する。外観は積層セラミックコンデンサやチップ抵抗器などのチップ部品とほとんど変わらない。
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