東北大学は、3次元でらせん状のナノスケールネットワーク構造を有した「ジャイロイド」を、ニッケル(Ni)と鉄(Fe)の磁性合金で形成させることに成功した。電子線ホログラフィーを用いて、複雑な磁気構造も明らかにした。
東北大学電気通信研究所のJustin Llandro助教と深見俊輔教授、大野英男教授(現総長)は2020年4月、英国やドイツ、スイスのチームとの共同研究により、3次元でらせん状のナノスケールネットワーク構造を有した「ジャイロイド」を、ニッケル(Ni)と鉄(Fe)の磁性合金で形成させることに成功したと発表した。また、電子線ホログラフィーを用いて、複雑な磁気構造も明らかにした。
磁性体からなる3次元のナノスケール人工構造体は、さまざまな新奇スピントロニクス物理現象を発現することが予測されている。ただ、ナノスケールでの3次元的な構造物の形成や、内部の磁気的な構造を同定することが、これまでは難しいとされてきた。
研究チームは今回、自己組織化の手法を用い、ジャイロイドを作製した。ジャイロイドは70.5度の角度でねじれた一対の三差路構造が組み合わさって単位胞を形成している。この単細胞が、x、y、zの方向に2つずつ並んだネットワーク構造となっている。
具体的には、まずポリ乳酸(PLA)とポリフロオロスチレン(PFS)を自己組織化させてジャイロイドのネットワークを形成。その後に、PLAを分解し残ったPFSの鋳型にNi-Feを埋め込む。さらにPFSを分解し、Ni-Feのジャイロイドを形成した。単細胞のサイズは42nmで、細線の直径は11nmである。
研究チームは、電子線ホログラフィーを用いて、作製した磁性ジャイロイドの磁気構造を観察した。これにより、磁性ジャイロイドはエントロピーの高い磁気構造となっていることが分かった。
研究チームによると、今回の成果は音声など時系列情報の処理に適した新概念コンピュータなどに応用できるとみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.