東北大学と大阪大学、京都産業大学および、ケルン大学の共同研究グループは、普通の超伝導体をトポロジカル超伝導体に変換する方法を開発した。
東北大学と大阪大学、京都産業大学および、ケルン大学の共同研究グループは2020年1月、普通の超伝導体をトポロジカル超伝導体に変換する方法を開発したと発表した。「超伝導近接効果」を用いるこれまでの方法とは全く異なる手法だという。
今回の成果は、東北大学材料科学高等研究所の佐藤宇史教授、高橋隆客員教授、同大学院理学研究科のチー・トラン博士課程大学院生、大阪大学産業科学研究所の山内邦彦助教、京都産業大学の瀬川耕司教授、ドイツ・ケルン大学の安藤陽一教授らの共同研究によるものである。
トポロジカル超伝導体は、その表面やエッジ(端)に「マヨラナ粒子」と呼ばれる特殊な粒子が存在するといわれており、量子コンピュータへの応用が期待されている。ところが、トポロジカル超伝導体を実現するための決定打はこれまでなかったという。
共同研究グループは今回、2010年に発見したトポロジカル絶縁体「TlBiSe2」に着目した。分子線エピタキシー法を用い、TlBiSe2の表面上に膜厚数nmのPb(鉛)超伝導薄膜を成長させることに成功した。
そして、この試料を角度分解光電子分光法で測定し、Pb表面のバンド分散を調べた。その結果、これまでPb薄膜とトポロジカル絶縁体の界面に埋もれて見えなかったディラック電子表面状態を、Pb表面で観測することができた。
研究グループによれば、TlBiSe2の表面上に局在していたディラック電子が、Pbとの接合でPb側に移動したことを示しているという。さらに試料をPb薄膜の超伝導転移温度(〜6K)以下に冷却して、エネルギー状態を精密に測定したところ、ディラック電子が超伝導になったことを示す「超伝導ギャップ」を観測することができた。
これまで一般的に行われてきた「超伝導近接効果」を用いる方法では、マヨラナ粒子が物質内部の界面付近に埋もれてしまうため、走査トンネル分光などによる測定でも、マヨラナ粒子を検出することは極めて難しかったという。
今回の成果によって、接合した超伝導体そのものをトポロジカル超伝導体に変換するという新しい方向性を示した。この手法は汎用性も高く、さまざまな超伝導体とトポロジカル絶縁体の組み合わせにも適用できるとみている。
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