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電機大手8社決算、コロナの影響が大きく分かれる結果に大山聡の業界スコープ(29)(1/4 ページ)

緊急事態宣言がまだ解除されていない中、電機大手各社は新型コロナウィルスの影響をどのようにとらえているのか。大手電機8社の決算発表時のコメントを分析しながら、現状と今後をどのように見据えるべきなのか、整理してみたいと思う。

» 2020年05月21日 11時30分 公開
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 例年であれば、電機大手8社の2019年度(2020年3月期)決算結果は5月上旬には出そろっているはずだ。だが、今年は新型コロナウィルスの影響で各社の決算発表が遅れ、5月中旬を過ぎても決算発表できない企業がある(日立製作所は2020年5月29日、東芝は6月5日の発表を予定)。また、発表はしたものの、2020年度(2021年3月期)の業績予測を開示できない企業も多い。緊急事態宣言がまだ解除されていない中、電機大手各社は新型コロナウィルスの影響をどのようにとらえているのか。決算発表時のコメントを分析することで、現状と今後をどのように見据えるべきなのか、ここで整理してみたいと思う。

IT部門以外はコロナによる下振れリスクの大きい日立製作所

 日立製作所の2019年度売上高は8兆7000億円(前年比2.4%減)、調整後営業利益6690億円(同859億円減)、当期利益2140億円(同1070億円減)の見込みである(第3四半期決算発表時点)。

出典:日立製作所決算資料よりGrossberg作成

 IT部門は、システムインテグレーション事業が好調だが、デジタルソリューション事業拡大に向けた投資の増加で収益はほぼ前期並みの見込み。エネルギー部門は、原子力案件の減少などで減収減益見込みである。インダストリー部門は、産業・流通BU(ビジネスユニット)の収益改善とデジタルソリューション事業の伸長で、減収ながら大幅増益の見込み。モビリティ部門は、英国で鉄道システムの下振れもある一方、中国でビルシステムBUの伸長もあり、ほぼ前期並みの収益見込み。ライフ部門は、オートモーティブ事業の車載情報システム事業売却による減収があるが、家電やヘルスケア事業の収益改善で増益を見込んでいる。日立ハイテクノロジーズは、液晶露光装置の需要減などで減収減益を予想。日立建機は、中国やインドでの売上減が大きく、やはり減収減益見込み。日立金属は、自動車・半導体・FA向け需要が低迷し、大きく減収減益の見込みである。日立化成は、半導体・自動車向けの需要減で減収減益見込みである。

 決算発表を5月29日に控える同社は、まだ2020年度の見通しについてコメントを出していないが、IT以外の部門はいずれも下振れリスクが大きそうなことを考えると、コロナウィルス感染による同社への影響は、相対的に大きいと見るべきだろう。

エネルギーやインフラシステム部門でコロナの影響が懸念される東芝

 東芝の2019年度売上高は3兆4300億円(前年比7.1%減)、営業利益1400億円(同1046億円増)、当期損益1520億円の赤字(同1兆1653億円減)の見込みである(第3四半期決算発表時点)。

出典:東芝決算資料よりGrossberg作成

 エネルギーシステムソリューション部門は、原子力、火力/水力ともに減収だが、送変電/配電などで再生可能エネルギー需要の拡大と前期の一過性引当がなくなったことで黒字転換の見込み。インフラシステムソリューション部門は、公共インフラにおける社会システムの需要増で微増収ながら増益見込みである。ビルソリューション部門は、昇降機を中心に増収増益を予想。リテール&プリンティングソリューション部門は、国内の増収を海外の減収が相殺しており、為替の分だけ減益が発生する見込みだ。デバイス&ストレージソリューション部門は、半導体および、HDDともに大きく減収ながら、リストラ効果による収益改善で増益見込み。デジタルソリューション部門は、官公庁向けシステムが好調で、収益面での貢献が期待できるとみている。

 決算発表を6月5日に控える同社は、まだ2020年度の見通しについてコメントを出していない。ただ、エネルギーシステム、インフラシステムなどを中心に、コロナウィルス感染による下振れリスクがあると見るべきだろう。

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