シャープの2019年度売上高は2兆2712億円(前年比5.4%減)、営業利益527億円(同314億円減)、当期利益209億円(同533億円減)であった。
スマートライフ部門は、白物家電の増収よりもデバイスの減収が大きかったが、コストダウンが進んだために増益だった。8Kエコシステム部門は、スマホ向けおよび、車載向けディスプレイの需要減、テレビの需要減で減収減益になった。ICT部門は、Dynabook株式会社を連結した影響で増収となったが、収益面ではほぼ前期並みであった。
2020年度の見通しは、コロナの影響が不明確なため、正式な公表を見送ったが、2019年度は第4四半期の影響だけで売上178億円、営業利益36億円の下振れがあった、と同社は公表している。影響はすべての部門に出ており、特に同社の中核である8Kエコシステム部門での下振れが大きかったことを考えると、今期は営業利益で数百億円規模の下振れを覚悟する必要があるかもしれない。
ソニーの2019年度売上高は8兆2599億円(前年比4.7%減)、営業利益8455億円(同488億円減)、当期利益5822億円(同3341億円減)であった。
ゲーム&ネットワークサービス分野は、PS4がハード/ソフトともに減収減益要因となった。音楽分野は、EMIを連結子会社化、ストリーミング配信の増加が増収要因だったが、前年度はEMIの連結子会社化に伴う再評価益1169億円の計上があったため、見た目は減益となった。映画分野は、劇場興行収入とテレビ番組作品のライセンス収入が増収増益に貢献した。エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野は、スマホおよび、テレビの売上台数減で減収だったが、モバイルコミュニケーションにおける事業コスト削減により増益になった。イメージング&センシング・ソリューション分野は、イメージセンサーが好調で増収増益となった。金融分野はソニー生命が増収ながら株式相場の下落などで減益になった。
2020年度の見通しは、コロナウィルス感染の影響が不明確なため、正式な公表を見送ったが「営業利益は前期比3割程度減少の可能性がある」としている。分野別には、伸長が期待できるのは、PS4およびネットワークサービス、映画のデジタル配信、下振れが懸念されるのは、音楽分野、映画の興行収入、スマホ、テレビ、イメージセンサー(スマホ向け)、金融など。特にイメージング&センシング・ソリューション分野の下振れリスクが最も懸念される。大手電機8社の中で、同社は最もスマホ市場依存度が高く、その分、下振れ懸念も相対的に大きいと言わざるを得ない。
今回の決算で、各社ともあらゆる部門においてコロナの悪影響が懸念されることが確認されたが、IT事業を中心とするNEC、富士通は相対的にリスクが小さく、家電、自動車関連はリスクが大きい、という差異があるように見受けられる。重電、社会インフラ関連も悪影響を受けるが、IT化を進めることでリモート処理ができる、効率化が進むなど、従来型からの改善点の有無が重要なポイントと考えてよさそうだ。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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