ベルギーの研究機関imecは2020年5月下旬、デジタルRFと機械学習(ML)を活用し、消費電力を従来の10分の1に削減しながら、厳しい環境下でも10cm未満の高精度な測距を実現する次世代超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)技術を開発した、と発表した。
ベルギーの研究機関imecは2020年5月下旬、デジタルRFと機械学習(ML)を活用し、消費電力を従来の10分の1に削減しながら、厳しい環境下でも10cm未満の高精度な測距を実現する次世代超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)技術を開発した、と発表した。
imecは、安全で非常に高精度な測距技術のための「セキュアプロキシミティ(安全な近接検出)研究プログラム」から2つの新しいイノベーションを発表した。1つ目はハードウェアベースで、完全デジタル位相ロックループ(PLL)のようなデジタル形式のRF回路設計によって、4mW/20mW(Tx/Rx)未満の低消費電力を実現したというもの。imecは、「従来の実装に比べて消費電力が最大10倍向上した」と主張している。2つ目は、MLに基づくエラー訂正アルゴリズムを用いたフトウェアベースの機能拡張だ。これによって厳しい環境下でも10cm未満の測距精度を実現できるという。
imecは、「UWB技術は、自動車に広く採用されている“スマートロック”ソリューションのように、高精度で安全な無線測距のユースケースのサポートに広く活用できる」と説明している。スマートロックは、所有者が車から離れるとドアを自動的にロックし、近づくとロックを解除する技術だ。しかし、UWB技術は、代替技術よりも本質的に不正アクセスされにくいなどといった利点があるにもかかわらず、消費電力の高さとサイズの大きさがネックとなって、その可能性はほとんど活用されないままだった。
imecは、今回発表したハードウェアとソフトウェアのイノベーションについて、「UWB技術の可能性を最大限に引き出すための重要なステップとして、これまで広く推進されてきた安全なキーレスアクセスの枠を超えて、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)ゲームやアセットトラッキング、ロボティクスなどのマイクロローカリゼーションサービスの機会を開くものになる」と述べている。
imecのプログラムマネジャーを務めるChristian Bachmann氏は、「特に無線測距アプリケーションの展開に関しては、UWBの消費電力とチップサイズ、関連コストが同技術の採用を妨げる要因となっていた」と述べている。Bachmann氏は、「imecの最新のUWBチップは、デジタル形式のRFコンセプトに基づく技術のフットプリントを大幅に削減した。具体的には、受信角度(Angle of Arrival:AoA)測定用の3つのレシーバーを含む全トランシーバーを1mm2未満のエリアに統合することに成功した」と説明している。
同氏は、「これは、IoTセンサーノードデバイスに適用可能な最先端の半導体プロセスノードで実装される場合についてのことだ」と付け加えた。この新たなチップは、スマートフォンと自動車のコネクティビティソリューションを推進する業界団体である「Car Connectivity Consortium(CCC)」やUWB技術を活用した距離測定や位置測定技術を推進する「Fine Ranging(FiRa)」などの影響力の強い業界コンソーシアムがサポートする新しい無線通信規格「IEEE 802.15.4z」に準拠しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.